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労働相談Q&A
 

 

 


16労働行政


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<名前を伏せて労働基準監督署に訴えたい>

 

Q:名前を伏せて労働基準監督署に調査に入っていただく事は出来ないでしょうか? 残業代を払わないのは勿論ですが、賃金自体を誤魔化す、休日はまず取れず、当然有給休暇など一日もありません。手取り総額は世間以上に払っているというのが自慢で、やりたい放題の社長です。

 

A:本当に許しがたい社長ですね。労基署に対して、3つの方法があります。

 1.労基法による「申告」

 労基法104条は、「事業所に…違反する事実がある場合、労働者は、その事実を労基署に申告することができる」となっています。この条文から、所属する労働者(あなた)自身の申告でなければならないとされています。従って、匿名での申告は、「申告」として扱われず、「情報」ということになります。労基署に用意されている申告用紙にも申告者の氏名・住所等を記入することになっています。

 会社に知られて困る場合は、労基署に対しては氏名等を明らかにした上で、「名前を会社に公表するな」と言うことができます。労基署は守秘義務がありますので、秘密は守られます。ただし、労基署が調査できる内容や範囲が、おのずと限られてくるのは致し方ありません。

 なお、残業代等の時効は過去2年ですから、退職後に申告することも可能です。

  2.刑事訴訟法に基づく「告発」

 国民は誰でも、会社の労基法違反を労基署に「告発」することが可能です。社員でなくても可能です。ただし、証拠や資料をきちんと添えて行わないと、受理されない場合があります。「告発」は労基署が一番嫌がりますし、実際問題として、受理させるのは難しいので、あらかじめ証拠を集め地域住民の協力を得て集団で行うことが必要です。

 告発に対しては、申告と同様、労基署は告発者に結果を報告する義務があります。
 
  3.第三者からの「情報提供」

 会社を管轄している労基署に対して、資料や具体的な経過や事情を詳しく書いて徹底的に情報を提供するという方法です。この場合は匿名でも可能です。ただし、「申告」や「告発」と違い、労基署は結果を報告する義務はありません。

 しかし、その労基署の管轄下のことですから、あまりにも悪質な企業を放置したとなれば、労基署自身の責任問題にも発展しかねません。最近では第三者からの情報提供で労基署が動き、「立ち入り」したケースもこ少しずつ増えています。

 しかし実際問題として、労基署の腰は重く、明らかな労基法違反でない限り中々動いてくれません。

 例えば、就業規則もなく、社長の胸先3寸で残業代が決められていることを申告したら、労基法89条(就業規則の作成・届出義務)違反を電話で指導しただけに終わった。結果として会社は、簡単な就業規則を作って届出ただけで済み、中身の指導はなかったので、腹は痛まなかったという例がありました。

 労基署によれば、残業代未払いの確たる証拠がなく、両者の解釈の違いなので、「明らかな法違反とはいえない」。「裁判所に判断してもらうのが適切」というのです。

 重い腰に加え、労基署による指導は、その問題が是正されたら終わりという、一過性の面があります。是正指導は法違反が明らかであることに限定され、かつ申告された以外の内容に中々立ち入りません。この点、一時的、局部的な解決になりがちで、将来にわたって会社のやり方を是正させる効果に欠けているのが現実です。

労基署の是正指導を一時的なものに終わらせず、将来にわたって会社を規制していくためには、社外の第3者ではなく、社内で常時監視する体勢が不可欠です。

 現状で、その役割を果たせるのは労働組合以外にありません。社長のワンマンを根本的に改めさせるために、地域のユニオンへ加入することを勧めます。




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