こんなときどうする
労働相談Q&A
 

 

 




13損害賠償



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<スーパーのレジです。不足分をみんなで弁償させられています>

Q:メールで相談します。スーパーのレジで働いています。時々、レジで不足分がでますが、店長の命令で5名の女性レジ係の連帯責任としてみんなで弁償させられています。納得できません。

 

A:メール拝見しました。「レジ係全員で不足分を弁償している」とのことですが、会社の不法な行為です。

 飲食店の店員が食器を割ってしまうことがある、スーパーやコンビニの店員がつり銭を間違えることがある、その他発注ミス、発送ミスなど、日常の業務の中で間違いが起こってしまうことは、どんなに注意していても避けられません。事業主は、そうしたミスによる損害をあらかじめ予定して事業を進めるものです。また、間違いが起こらないように従業員を教育する、過重な労働で疲労によるミスが出ないようにすることも事業主の責任です。

 従業員側に大きな過失があるような場合には、損害賠償ということが発生することもありますが、その場合でも全額ということではなく、損害の一部の負担をするということが限度です。なぜなら、間違いが起こりにくいシステムを作るといった会社の管理体制にも責任があると考えるべきだからです。

 ましてや、全く責任のない同僚が、全員で不足分を弁償する義務など一切ありません。今までの分を全額戻すように請求する権利があります。

 必要なら、労基署で確認して下さい。 

 http://www.campus.ne.jp/~labor/kankatu.html

 また、弁護士(日本労働弁護団)の無料電話相談窓口もあります。

 電話  03-3251-5363 ・ 5364

 無料電話相談 毎週月・火・木曜日 午後3時〜午後6時、毎週土曜日 午後1時〜午後4時 

 *ただし土曜日は「03-3251-5363」のみ

 


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<賃金からの損害額の控除>

Q:私は、運送業に従事している運転手ですが、先日事故を起こしてしまい解雇されました。そのこと自体については仕方がないと思っていますが、事故の弁償金として賃金を相殺すると言われました。しかし私にも生活があるので分割で支払うことを要求しましたが、賃金を支払ってくれません。何とかならないでしょうか。

 

A:労働基準法第24条「賃金」の全額払い(1項)では、社会保険等の支払いに生じる金額以外のものについては、現金で全額支払うことが義務付けられています。本人の同意もなく相殺することは認められません。

 労働基準監督署に、会社が賃金を支払うよう「申告」することをお勧めします。

 無論、会社の請求額が妥当であるならば、あなた自身が会社に支払わなければならない金額も発生するとは思いますが、あくまでも賃金の支払いとは別途に請求しなければなりません。同時に、解雇されることが妥当な事故かどうかも検証する必要があります。

 運転手が日々の運転の中で事故を起してしまうことは、あるものです。事故の原因が飲酒といった重大な法違反によるものであれば解雇もやむをえないかもしれませんが、事故の背景に「過労」や長時間労働があるような場合には、そのような働き方をさせた会社側にも重大な責任がるともいえます。


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<賠償予定>


Q:自動車免許を取り運送会社に働きはじめました。勤務中にコンビニに駐車している乗用車をこすってしまいました。会社で保険に入っているとのことで安心しておりましたが、昨日会社から 10 万円の請求が来ました。どうしてなのか良く分からないので会社に問い合わせてみました所、 10 万円の免責の保険だったそうです。私としては納得出来ないのです。この 10 万円を払わなければいけないのでしょうか?

 

A: 労働者の過失で会社に損害を与えた場合、会社が労働者に損害賠償を請求することは出来ますが、損害の中身も具体的かつ厳密な内容のものでなければならず、しかも給料から勝手に天引きすることなど違法行為です。本当に労働者に責任がある「破損」の場合でも業務命令に基づく仕事中の「破損」ですから、100%労働者がその損害を賠償することなど絶対にあり得ません。

 また、会社が事故分をあらかじめ罰金としての「 10 万円という額」を設定している場合は、明らかに労基法16条(賠償予定の禁止)違反です。

 また、労働者の過失に対する「制裁規定」での「減額処分」で賃金カットされる場合でも、制裁規定は、「就業規則」の中でどういう場合に行うか、また、制裁の内容・基準が厳密に定められていなければなりません。

 就業規則がなかったり、制裁規定に書かれていない場合は勿論、労働基準法 89 条(就業規則作成および届出の義務)違反で無効となります。

 仮に就業規則の制裁規定に書かれていても、その中身が、労基法に違反している場合、たとえば、労基法 91 条(減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を越えてはならない等)に違反していれば、当然、無効となります。「制裁」として 10 万円も引かれるとしたら当然違法です。

 となれば、会社は、労基法 24 条(賃金は、全額支払わねばならない)に違反していることになります。

 


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< 罰金の天引き >

Q:スーパーのレジ係りです。先頃、経営者がレジの計算が合わないから、今後は「罰金」を定めるといいだしました。また、レジで計算が合わない時は1回ごとにその差額と罰金を賃金から差し引くというのです。確かに人によってはとてもルーズな方もいますので、労働者側に過失が全くないとも言えません。どう考えたらいいのでしょうか。

 

A:メール拝見しました。経営側の完全な違法行為です。

 1.会社が罰金の「額」をあらかじめ設定している場合は、明らかに労基法16条違反です。また、債権と賃金を相殺する場合は、労基法17条違反です。

 また、労働者の過失に対する「制裁規定」の減額処分等に該当するかどうかですが、制裁規定は、「就業規則」の中で制裁の内容・基準が厳密に定められていなければなりません。就業規則の中の制裁規定に厳密に書いてあるのでしょうか。

 就業規則がなかったり、制裁規定に書かれていない場合は労働基準法 89 条違反です。

 また、仮に就業規則の制裁規定に書かれていても、その中身が、労基法に違反している場合、たとえば、労基法 91 条(減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を越えてはならない等)に違反していれば、当然無効となります。

 また労基法 24 条(賃金は、全額支払わねばならない)違反です。

 2.労働者の過失により会社に損害を与えた場合、会社が労働者に損害賠償を請求することは出来ます。

 しかし、その場合も、労働者本人の過失が証明されている場合のみです。また、労働者に過失がある場合でも労働者が10割を補償することなどまずありえません。


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< 業務中の損害賠償 >

Q:飲料、食品倉庫で働いているものです。

当社では、業務中に商品を落下させるなどで破損させたた場合、全額自己負担による賠償をさせられています。
たとえば、缶コーヒーのケースを落下させ数本凹ませた、などの場合でも1ケース分の買い取りなどです(ケース単位で出荷のため)

過去にはある方は数十万の弁償をさせられた事もあるという話しも聞きました。

数百円から数千円、さらにはこういった高額な弁償も全額自己負担となっています。

これは問題があるのではないでしょうか?

 

A:会社の業務を遂行中に起こした事故等による会社に与えた損害について、故意ではなく通常の起こり得る過失であった場合、本人に対して全額を損害賠償させることは普通できません。

 例えば、工場などで大量の製品を作っていれば不良品が必ず出ますが、それを個々の責任にして賠償させるということはできませんし、配送の際にトラックの交通事故で商品がダメになったとしても全額を本人に損害賠償させるということはできません。
  工場製品の不良品にしても、配送トラックの事故にしても100%防ぐことができるものではなく、会社の経営管理の中で一定の割合で会社が負担しなければならないリスクであるからです。

 ただし、故意や通常の作業手順では起こり得ない事故等による損害については、その損害の大部分は個人に責任があるものとして、損害賠償を請求される場合はあるのではないかと考えられます。
  それでも、100%の責任を個人に課すことは通常あり得ないことですし、裁判になった場合には、会社側が損害賠償請求をするのであれば、個人の故意や重過失が正確に証明され、そうした個人の行為が直接的にどの程度の損害に該当しているのか、根拠がなければその損害賠償額の妥当性は証明できません。

 会社に与えた損害が故意であればまだ分かりやすいですが、過失であれば業務遂行の中で何が原因で事故が発生したのか、会社が事故発生率を少なくするために従業員に対して行ってきた教育や過重労働の可能性など労務管理の問題等も絡んでくることになり、これらは会社の管理体制の責任とされる場合もあることから、全額を損害賠償させることは法的にも認められません。

 ですので、会社が今まで行ってきた全額自己負担による賠償という対応は、根拠が乏しく会社の一方的な請求でしかありませんが、会社がそのような対応をする根拠があるなら、例えば雇用契約書(誓約書)や就業規則に規定されている内容を提示してもらい、事故内容や損害額の実費明細書等を会社に請求することをお勧めします。
  それだけでも会社としてはそのような根拠書類を渡すことにはある程度慎重になるでしょうし、何の根拠もなく実際の損害額だけを請求しているということであれば、そういったことも有力な交渉材料となります。

 労働基準監督署に申告したり、会社側の要求に従わないことにより、会社内において不当な扱いを受ける可能性もあります。ご自分の身を守ることや会社側と交渉するにあたって労働問題に関する専門的な意見や助言を得て交渉力を強めるためにも、労働組合に加入して交渉することをお勧めします。

 今回の件は単純に実際の損害額だけを請求しているだけで、根拠は乏しいと思われますので、会社からの一方的な損害賠償の請求ということになります。
  迅速な決着を目指すのであれば、会社側が損害額の全額を従業員に請求するやり方は違法性が高いことを認識して、過失内容に基づく妥当な負担額で折り合う方向性になってもらえれば、従業員の方々も納得がいくのではないかと思います。
  会社側に対し違法性が高いことを指摘することにより、会社側が今までのやり方がまずかったことを認識し、対応を改めてくれれば円滑な問題解決になりますが、会社が聞く耳持たずということであれば、このような労働問題の解決ノウハウがある労働組合や弁護士に相談する必要がでてくると思います。

 今回の件は他の同僚の方々にも影響することですので、同僚のお仲間と一緒になって会社に対して主張することができれば、より効果的ではないかと思います。

 

 


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