こんなときどうする
労働相談Q&A
 

 

 


08労働条件


0801
<入社時に労働条件をハッキリさせるには?>


Q:入社時に労働条件をハッキリさせるにはどうしたらいいですか?

A:労働基準法では、労働契約を結ぶにあたって、使用者に対して書面による労働条件の明示を求めていますが、その内容は下記の通りです。

    1)労働契約の期間に関する事項

    2)就業の場所・従事する業務に関する事項

    3)始・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、

      休日、休暇、交替制勤務をさせる場合は就業時転換に関する事項 

    4)賃金の決定、計算・支払いの方法、賃金の締め切り・支払いの時期に関する事項

    5)退職に関する事項(解雇の事由を含む)

 この他にも書面ではなくとも、労働条件の明示を義務づけている事項も多々あり(詳しくは労基法第15条及び施行規則第5条に記載)、これに反すると罰則規定が科せられますので、きちんと要求すべきでしょう。

 


0802
<就職情報誌で「完全週休二日制・社保完備」だったが>

Q:私は、就職情報誌で「完全週休二日制・社保完備」となっていたので今の会社に就職しましたが、隔週の週休二日制で、社会保険にも加入してもらえません。

こんな事は認められるのでしょうか?


A:求人広告や求人票は、労働契約の申し込みの誘引のための「広告」という位置づけであり、職業安定法上では求人広告・求人票に示すべき項目までは定められています。

一方で、労働契約の内容は、労働者と使用者とが平等な立場で協議し、お互いの同意で決まったものが正式な労働契約になる、と労働契約法や労働基準法で定められており、求人広告・求人票の条件と少々の違いが出る事例も多いという実態もあります。

しかしだからと言って、下記に述べるように、違いがあっても必ずしも許される訳ではありません。

まず労働契約内容は、労働者に正しく理解してもらえるよう説明する義務が、使用者に課せられています(労働契約法第4条1項)。

職安法第42条でも、労働条件などの明示にあたって求職者の誤解が生じることのないように求めています。

次に、労働者は求人広告・求人票の内容を信用して応募したのだから、求人広告・求人票を著しく下回る賃金額は不当、とされた裁判例があります。

ハローワークの求人票は公的機関の文書なので、実際の労働条件とあまりに違う事例は不当、とされた裁判例もあります。

なお、職安法第65条8号では虚偽の求人広告を出した者には「6か月以下の懲役または 30 万円以下の罰金」という罰則も課しています。

したがって、求人広告どおりの条件にせねばならない、とは必ずしも決まっていませんが、上記の労働契約法・労働基準法の原則から、求人広告の労働条件にするよう要求し協議する余地はなくはありません。

それと社会保険は求人広告とは無関係の話です。

労災はいかなる事情があっても強制加入義務があり、雇用保険・健康保険・厚生年金保険は労働条件によっては加入義務があります。 


0803
<社長のワンマン気分次第で配転>

Q:社長のワンマン経営で気分次第の配転!? また、経営についての方針が二転三転?

A:社長の気分次第で配転させられてはたまったものではありません。

 また、社長の気まぐれで経営方針が変わっても働く者としてはおろおろするだけです。でも、一人で社長に談判にいったら「気に入らないなら辞めてもいいんだ」の一言。こんなところでは気持ちよく働けません。

 そんなとき労働組合があれば人事異動について同意協定を結ばせたり、 経営内容の開示を要求することもできます。


0804
<受動喫煙被害防止の法律>

Q: 労働相談センター様、メールで相談します。職場環境の受動喫煙被害です。事務所でのデスクワークですが、ワンマンな社長が率先して吸うために誰も止められません。たばこ被害の防止の法律はないのでしょうか。

A : メール拝見しました。健康増進法( 2003 年 5 月 1 日施行)では、第5章第2節 受動喫煙の防止第 25 条で「学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他の多数の者が利用する施設を管理する者は、これらを利用する者について、受動喫煙(室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされることをいう。)を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない」としています。

 事務所内も各フロアーの共用部分も適用対象になります。また、事務所内の受動喫煙による健康被害が発生した場合、管理者(経営者)を相手に告訴することが可能となります。

  健康増進法第 25 条をクリアするために厚生労働省が出しているガイドラインでは、喫煙場所から非喫煙場所にタバコの煙が漏れない喫煙室の設置をするか、敷地内 ( 事務所内 ) をすべて禁煙にすることを求めています。

また、平成 15 年4月 30 日 厚生労働省健康局長通知(健発第 0430003 )をご紹介しておきましょう。

  1.  健康増進法第25条の制定の趣旨

健康増進法第25条において、「学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他多数の者が利用する施設を管理する者は、これらを利用する者について、受動喫煙を防止するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない」こととされた。また、本条において受動喫煙とは「室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされること」と定義された。受動喫煙による健康への悪影響については、流涙、鼻閉、頭痛等の諸症状や呼吸抑制、心拍増加、血管収縮等生理学的反応等に関する知見が示されるとともに、慢性影響として、肺がんや循環器疾患等のリスクの上昇を示す疫学的研究があり、IARC(国際がん研究機関)は、証拠の強さによる発がん性分類において、たばこを、グループ1(グループ1〜4のうち、グループ1は最も強い分類。)と分類している。さらに、受動喫煙により非喫煙妊婦であっても低出生体重児の出産の発生率が上昇するという研究報告がある。

本条は、受動喫煙による健康への悪影響を排除するために、多数の者が  利用する施設を管理する者に対し、受動喫煙を防止する措置をとる努力義務を課すこととし、これにより、国民の健康増進の観点からの受動喫煙防止の取組を積極的に推進することとしたものである。 

  2.  健康増進法第25条の対象となる施設

健康増進法第25条においてその対象となる施設として、学校、体育館、 病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店が明示されているが、同条における「その他の施設」は、鉄軌道駅、バスターミナル、航空旅客ターミナル、旅客船ターミナル、金融機関、美術館、博物館、社会福祉施設、商店、ホテル、旅館等の宿泊施設、屋外競技場、遊技場、娯楽施設等多数の者が利用する施設を含むものであり、同条の趣旨に鑑み、鉄軌道車両、バス及びタクシー車両、航空機、旅客船などについても「その他の施設」に含む。



0805
<私(女性)だけ弁当買いに行かされる>

Q: 男の社員のみなさん7名の昼弁当を私(女)一人だけが毎日買いに行かされます。

お弁当を買いに行く事で、私のお昼時間も潰れます。

A:問題点が2点あります。

1つ目は、労働基準法違反が疑われることです。

労働基準法では、休憩時間とは労働者が業務指揮命令から離れられ、自由に利用できる時間とするように、と定められています。

もし弁当のお使いが事実上の業務命令になっているのであれば、法の上では休憩ではなく「労働時間」とみなされる可能性も場合によってはあり、それに伴い賃金支払いの義務も発生します。

2つ目は、性別差別の問題です。

男女雇用機会均等法第6条では、労働者の配置について性別を理由とした取り扱いをするのを禁じております。

この「配置」の具体的な内容は法律の条文上では詳しく言われていませんが、この条文の解釈を定めた指針(労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針)では、会議の庶務、お茶くみ、掃除当番などの雑務を行わせるのも「差別的取り扱い」と定めています。

したがって、弁当のお使いは「女性がするもの」という慣習のもとで行われているならば男女雇用機会均等法違反となります。

法的な責任を追及できるかどうか、そしてそこまで本当にやるかどうかは職場の実態やご自身の意思次第ですが、まずは、男性も交代でできないか、弁当の買い方自体も改善できないか、建設的に提案してみるのはいかがでしょうか。

話が込み入ってきて何らかの問題に発展しそうなときは我慢せず、都道府県の労働局の雇用均等室、誰でもお一人でも加入できる労働組合(地域ユニオン)にご相談ください。



0806
<ボランテイアと称してお寺のトイレ掃除を強制されます>

Q: 「社会福祉法人の施設職員ですが、理事長がお坊さんで、会議前には必ず般若心経を唱和され、またボランティアと称して、公休返上で○○山の有名なお寺のトイレ掃除に、ほぼ毎週、各施設何名か召集されます。研修等も公休を使って行かされる、夜勤明け、公休が勤務日になることは日常茶飯事です。助けて下さい」

A:本来の業務となんら関係のない、お寺のトイレ掃除の強制が業務命令の濫用になることは明らかです。これは、信教の自由に反していると考えます。

 

  すべては重大な違法行為です。すべて公的なお金で運営されている社会福祉法人が、このような反社会的違法行為を堂々と行っていることが、厚生労働省や社会的に明らかになれば、社会福祉法人として認可している監督責任のある行政の責任も追及される話です。

  今後の対策ですが、職員が団結して労働組合を立ち上げ、真正面から、違法行為の是正を請求し、

 

    労働基準監督署  http://www.campus.ne.jp/~labor/kankatu.html

 

に申告して、社会や行政からもきちっと監督させていくのがいいのではないでしょうか。

 


0807
<名前を伏せて労働基準監督署に訴えたい>

Q:名前を伏せて労働基準監督署に調査に入っていただく事は出来ないでし ょうか?残業代を支払わないのは勿論ですが、賃金自体を誤魔化す、休日はまず取れず、当然有給休暇など一日もありません。手取りそのものは世間以上支払っているということを自慢にしてやりたい放題の社長です。

A:本当に許しがたい社長です。

  1.労基法 104 条に基づく会社の労基法違反の労基署への「申告」は、「労働者は、その事実を労基署に申告することができる」となっています。つまり、そこの労働者(あなた)自身の申告でなければなりません。

  (残業代等の時効は2年間ですから、労働者本人が退職後に申告することも可能です)。この場合は、労基署に対して、会社にこちらの氏名を公表するなと伝えてください。労基署は守秘義務がありますので、絶対に会社にあなたの氏名を伝えません。

 2.もう一つは、刑事訴訟法に基づく「告発」です。これは第三者であっても、会社の労基法違反を労基署に「告発」することは可能です。その場合は告発に足る証拠や資料をきちんと添えて行わないと「受理」されない場合もあります。この「告発」は労基署が一番嫌がりますし実際難しいです。

 3.もう一つの方法としては、第三者からの「情報提供」という方法です。会社を管轄している労基署に対して、資料や具体的な経過や事情を詳しく書いて徹底的に情報を提供するという方法です。この場合は匿名でも出来ます。この場合、「申告」と「告発」と違って労基署はその結果を明らかにする義務はありません。しかし、その労基署の管轄下の企業での出来事ですから、あまりにも悪質な企業を放置したとなれば、ゆくゆくは労基署自身の責任問題にも発展しかねませんので、第三者からのしっかりした情報提供で労基署が動いて「立ち入り」したケースもこのところ少しずつ増えています。



0808
<業務内容の変更>

Q:業務内容の変更についてお尋ねします。 私は有料老人ホームの介護スタッフとしてパートタイム勤務をはじめました。本日、突然パートタイム勤務している3人は現在の施設付けから本社付けとし、今後の仕事は入居者様の病院受診の付き添いとレクリェーションのみとし、現在の施設で該当の仕事がない場合は他地域施設への派遣もありうるという話を一方的に言われました。このように勝手に業務内容を制限されても受け入れなくてはいけないのでしょうか。拒否することはできないのでしょうか?

A:メール拝見しました。

 あなたの心配とお怒りはよく理解できます。

 裁判判例でも現在の日本社会での転勤・配転命令権は会社に有利にされているのが現状です。

 しかし、配転・転勤拒否の理由が労働者の側にとって「正当・相当」な合理的理由がある場合は、その転勤拒否は正当なものとされ保護されます。

 「正当・相当」な理由とは、労働者本人家族の病気・健康上の理由や家族の介護などの理由です。

 このような「正当・相当」な理由がある場合、転勤を拒否した労働者を不当に不利益扱いすることは違法行為となります。

 もう一つは、入社時の労働契約の中身によります。

 入社時の労働契約書の中に、具体的に就業場所が明記されてある場合には労働者には契約時の就業場所以外への転勤を拒否する権利があります。

 もうひとつの考え方として「労働条件の一方的不利益変更」があります。

 そもそも、経営側が、労働者の労働条件を、一方的に不利益に変更することは許されていません。「労働条件の一方的不利益変更」は裁判の判例上でもやってはいけないこととして確立されています。

 今回の場合も配転に伴う「不利益」がどの程度なものかによります。

 詳しくは弁護士(日本労働弁護団)の無料電話相談窓口でお確かめ下さい。

日本労働弁護団  http://homepage1.nifty.com/rouben/soudan1.htm

電話  03-3251-5363

毎週月曜日、火曜日と木曜日午後から3時から午後6時

毎週土曜日 午後1時〜午後4時 *ただし土曜日は「03-3251-5363」のみ)

 一番望ましいのは、労働者が結束して労働組合を立ち上げるか、一人でも入れる地域合同労組に何人かの仲間と一緒に加入して、経営側と対等な立場で労働条件に関して団体交渉をして決定していくことです。「労働条件の一方的不利益変更」は認めないと通告し、きちんとした協議を行うよう要求することです。

 労働組合の武器の一つに団体交渉権があります。経営側は労働組合との協議を拒否することは絶対にできません(労組法 7 条 2 号)。



0809
<業務メールを会社側に「検閲・閲覧」されて懲戒処分>

Q:会社のメールで一度だけ私的に使用したことがあり、それが会社側に「検閲・閲覧」されて「俺を悪者にし、トップ批判したやつがいるから辞めさす」と解雇になりました。メールの内容も「トップ批判」などしていません。

A :メール拝見しました。以下参考にして下さい。

  社内メールなどを会社側が「検閲・閲覧」する会社が多いことは新聞等でも報道されています。この「検閲」を専門に仕事としている人すら出てきています。社員をスパイすることが当然であると思っている品性下劣な経営者が増えて来ています。

 確かに会社のパソコンを業務中に私的なメールに使用する事自体は良いこととは言えませんので仮に一定のペナルティーが課せられることはあっても、たった一度私用に使用しただけで解雇はひどい話です。

 ただし、メールの中身が問題になります。本当にあまりにもひどい「俺を悪者にし、トップ批判した」内容の場合、裁判所がその解雇を認める可能性もないとは言えません。「トップ批判などしていません」とのことですので、一度弁護士と具体的に相談なさることをお勧めします。

 弁護士の無料電話相談窓口

   日本労働弁護団  http://homepage1.nifty.com/rouben/soudan1.htm

電話  03-3251-5363 毎週月曜日、火曜日と木曜日午後から3時から午後6時、 毎週土曜日 午後1時〜午後4時 *ただし土曜日は「03-3251-5363」のみ)


0810
< 労働契約とは >

Q:会社がこの度、労働基準監督署から「労働契約」を結べと指導されました。私が担当となり、社員との労働契約を取り結ぶこととなりました。そもそも「労働契約」とは何ですか。教えて下さい。

A:賃金や労働時間などの労働条件の取り決めを「労働契約」といいます。労働基準法では、次に挙げる労働条件を明らかにした書面を交付するように事業主に対して義務づけています。

 1.労働契約の期間

 2.仕事の場所とその内容 

 3.仕事の始まりと終わりの時刻、休憩時間、休日・休暇、交代勤務の

  ローテーション

 4.賃金の決定、計算と支払いの方法、締め切りと支払いの時期

 5.退職に関すること

 このほかに退職金や一時金制度がある場合は、それも明示する必要があります。

 また、労働時間(一日8時間、週 40 時間)や残業代・休日労働手当や有給休暇などを規定している労基法は絶対に守られなければなりません。雇用保険や労災保険の加入も同様です。

 これら入社時に明示された労働条件と事実が相違する場合は、労働者は即時に契約を解除する権利があります(労基法 15 条)。

 また、パートも含めて 10 名以上の労働者がいる事業所には、必ず「就業規則」を作成して、労働者に周知徹底させなければなりません。

 必要であれば労働基準監督署の電話相談窓口もありますので利用してください。



0811
< 女性だけの「お茶くみ」 >


Q:上司から「お茶くみ当番に加わってほしい」と言われました。

職場には男性もいますが、「お茶くみ」当番は女性職員のみです。

これは法律に違反しないのでしょうか。

A:男女雇用機会均等法第6条では、労働者の配置について性別を理由とした取り扱いをするのを禁じております。

この第6条の「配置」の具体的な内容ですが、条文の解釈をより具体的に定めた指針(労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針)によると、会議の庶務、お茶くみ、掃除当番などの雑務を行わせるのもはっきりと「差別的取り扱い」としています。

したがって、女性社員のみのお茶くみは男女雇用機会均等法違反となります。

同じように疑問に感じている女性社員の方々が他にもいらっしゃるなら、ともに話し合い、お茶くみのやり方を改めるよう会社側に何らかのアクションをとるかどうか検討する、という考え方もあります。

また、男性社員でも疑問に感じている方がいれば味方につけるのもいかがでしょうか。

いずれにしてもどうかしたいということならば、状況に応じてご検討ください。


0812
< ホームヘルパーの労働条件 >

Q:ホームヘルパーをしています。給料を含め、待遇が悪いと感じています。ホームヘルパーに対する法的に何か特別な決まりなどはないのでしょうか。

 

A:メール拝見しました。

 厚労省は、ホームヘルパーの労働条件を確保するよう求め事業所に労働基準法に定める労働条件の確保を徹底するよう指示する以下の通達を都道府県労働局長あてに出しています。参考にして下さい。

 通達・「訪問介護労働者の法定労働条件の確保について」

   (平成16年8月27日付け 

厚生労働省労働基準局長通知・基発第0827001号)

通知・「訪問介護労働者の法定労働条件の確保について」

(平成16年8月27日付け 

厚生労働省老健局振興課長通知・労審発第0827001号)

 通達の要旨は次の通りです。

 1 、労働条件の明示

○ 採用の際、使用者は、契約期間の定めの有無及び期限付きの時は契約期間を「明確に定めて」、それを書いた書面を渡さなければならない

  ・利用者の希望に基づき、指定された日・時間だけ働くヘルパーの場合、勤務日と次の勤務日の間があくことがあるが、その間も労働契約が継続しているのかどうかをはっきりさせるため。

  ・そもそも、使用者は、採用の時に、契約期間・勤務時間・賃金などの労働条件を書いた書面を渡さなければならない(労働基準法第 15 条第1項、労働基準法施行規則第5条第1項、同条第3項)。

○ 有期の労働契約の場合は、更新の有無及びその判断の基準を契約の際に明示しなければならない。また雇い止めの際には、30日前までに予告しなければならない。(労働基準法第14条第2項、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」(平成15年厚生労働省告示第357号)=2004年1月1日から適用)

○労働契約を更新するときは、その都度、改めて労働条件を明示する必要がある。

 

 2 、労働時間にはいるもの(労働基準法第32条)

○移動時間

 事業場・集合場所・利用者宅の相互間を移動する時間の取扱い。

  ・ 使用者が、業務に従事するために必要な移動を命じ、労働者がその時間を自由に利用できないときは労働時間に該当する。

  ・ たとえば、事業場→利用者宅や利用者宅→次の利用者宅の移動時間で、その時間が通常の移動に必要な時間程度であれば該当する(労働者の判断で寄り道していない)。

○業務報告書等の作成時間

  ・ 「その作成が介護保険制度や業務規定等により業務上義務付けられているものであって、使用者の指揮監督に基づき、事業場や利用者宅等において作成している場合には、労働時間に該当する」。

○ 待機時間

 ・ 「使用者が急な需要等に対応するため事業場等において待機を命じ、当該時間の自由利用が労働者に保障されていないと認められる場合には、労働時間に該当する」。


○研修期間

   ・ 「使用者の明示的な指示に基づいて行われる場合は、労働時間」

   ・ 「研修を受講しないことに対する就業規則上の制裁等の不利益な取扱いがある場合や研修内容と業務との関連性が強く、それに参加しないことより、本人の業務に具体的に支障が生ずるなど実質的に使用者から出席の強制があると認められる場合などは、……労働時間」。

 

 3 、休業手当

  利用者からキャンセルや時間変更があったために休みになったときの取扱い。

 ・ 勤務日・時間帯が勤務表により特定された後、労働者が労働の用意をし、労働の意思を持っているにもかかわらず、使用者が就業(全部または一部)をキャンセルしたときは、使用者は、平均賃金(時給制の時は、時給)の60%の休業手当を支払わなければならない。

 ・ 他の利用者宅での勤務等の代替勤務をさせた場合、勤務時間帯や勤務日の変更をした場合には、手当の支払いの必要はない。

 

 4 、賃金の算定

○ 訪問看護の業務をした時間だけではなく、上記 2 の時間も含めて賃金を支払わなければならない。

○ 訪問介護の業務をした時間とそれ以外の業務をした時間の賃金については、(差を設けてもよいが)「最低賃金を下回らない範囲で、労使の話合いにより決定されるべき」。

○ 賃金と最低賃金とを比較するときは、使用者から支給される、移動に必要な交通費は、賃金として計算しない。(訪問介護は、利用者宅に移動して業務に従事することを前提とするものなので、移動にかかる費用は事業の必要経費)

 

 5 、年次有給休暇

○ 6ヵ月以上継続勤務している人に対して、短期間(たとえば1ヵ月)の契約の更新だから有休を認めない、という取扱いはできない。

○ (労働基準法第39条の)「継続勤務」とは、「在籍期間を意味し、継続勤務かどうかについては、単に形式的にのみ判断すべきものでなく、勤務の実態に即し実質的に判断すべきもの」。

○ 勤務日が固定していない、いわゆる登録ヘルパーなどの場合、有休日数算出の基礎となる所定勤務日数は、基準日(権利が発生する日)において予定されている今後1年間の所定労働日数だが、算出しにくい場合には、基準日前の日数による。(たとえば、雇い入れから6ヵ月たった人の場合、「過去6ヵ月の勤務日数×2」を「1年間の所定労有休の日数は、常勤の人の有休日数×週の所定勤務日数/5日(週により違う場合は「年」単位で計算)。勤務日数は、勤務した時間の長短に関係なく「1日」として数える。

 

 6 、就業規則

○ パートタイマーも、就業規則作成の要件である「常時10人以上の労働者」に含まれる(月ごと/週ごとに勤務日を指定される登録ヘルパーも含まれる)。

※「常時10人以上の労働者」を雇うものは、就業規則を作成しなければならない(労働基準法第89条)。

○ 登録ヘルパーについては、就業規則を書面にして渡すことが望ましい。

※ 就業規則は、各作業場に掲示したり、備えつけたり、各労働者に書面にして渡したりして周知しなければならない(労働基準法第106条第1項、労働基準法施行規則第52条の2)。




0813
< 転勤を拒否したら賃金ダウン >

Q:当社は静岡と東京の2拠点となっており、本社は静岡となります。社員は半々で静岡と東京で勤務しています。今後、現在と異なる勤務地への転勤を拒否すると社員への考課(業績考課と能力考課の両方)を1ランク下げるというものです。現在、静岡勤務でその人が東京勤務を拒否した場合、考課1ランクダウンが適用されるということになります。転勤を拒否することが、考課ダウンしいては給料ダウンにつながるのはあるまじき行為であると考えますが、如何でしょうか?


A:メール拝見しました。

 転勤を拒否したからといって、会社が考課を1ランク下げたことにあなたが怒るのは至極当然だと考えます。そもそも転勤問題と賃金は別問題です。

 しかし、残念なことですが、現在の日本社会での転勤・配転命令権は会社に有利にされているのが現状の裁判判例です。

 配転命令に従わない場合、考課ランクを下げると社内の規定や労使協定で締結されている場合合法となる可能性もあります。

 ただ、配転・転勤拒否の理由が労働者の側にとって「正当・相当」な合理的理由がある場合は、その転勤拒否は正当なものとされ保護されます。「正当・相当」な理由とは、労働者本人や家族の病気や健康上の理由や家族の介護などがあたります。

 このような「正当・相当」な理由がある場合、転勤を拒否した労働者の考課ランクを下げることは違法行為となり、絶対に認められていません。

 もう一つは、入社時の労働契約の中身によります。

 入社時の労働契約書の中に、具体的に就業場所(静岡等)が明記されてあり、かつ、賃金の規定もある場合には、労働者には静岡以外転勤を拒否する権利があります。

 また契約書に賃金が具体的に明記されてあれば、会社が一方的に賃金を下げることは違法となります。

 詳しくは弁護士(日本労働弁護団)の無料電話相談窓口でお確かめ下さい。

 日本労働弁護団  http://homepage1.nifty.com/rouben/soudan1.htm

 電話  03-3251-5363・5364

 毎週月曜日、火曜日と木曜日午後から3時から午後6時

 毎週土曜日 午後1時〜午後4時 *ただし土曜日は「03-3251-5363」のみ)

 


0814
< 研修費用の返還 >

Q:入社し、研修が行われ、 MR 認定試験という試験を受け、合格しました。その後月々手当てをもらっています。その約半年後に会社から誓約書を書くように求められました。内容は「試験に合格後3年以内に退職した場合、研修にかかった費用を全額返す」というものでした。最近、後輩が退職を願い出たところ、その誓約書を持ち出して研修費用を請求されたそうなんです。この誓約書の内容に異義を申し立てることはできないのでしょうか。サインした以上、素直に請求額を支払うほかないのでしょうか。

A: 1.労基法上の退職の自由について労基法第 16 条「使用者は、労働契約の不履行について、違約金を定め、損害賠償を予定する契約をしてはならない」としています。

 この労基法上保障されている「退職の自由」ひいては憲法上の権利である「職業選択の自由」に違反しているかが問題となります。

 研修費用を使用者が貸与して、その条件として一定期間就労を義務付け、その期間内に退職した場合には研修費用を返還するという誓約書を取り、社員の「足止め策」とすることがしばしば行われています。研修費用を返還させられることを恐れ、自由意志に反して労働関係を強制(退職できない)されることになりかねません。

 本件の場合、会社の業務に必要な資格( MR 認定試験)であり、本人の希望というより会社の業務命令と考えられること。また、「多額の費用をかけて試験に合格させたすぐあとに競合他社に転職されるのを防ぐことが目的」であるとすれば、<退職させないことを目的>としていることは明らかですので、労基法第 16 条違反に該当すると考えます。

裁判判例

@武谷病院事件(東京地裁平 7 年 12.26 労働判例 689 号)

 1年で中途退職した看護婦さんに対して、病院側の学費・生活費の返還請求権は認めないとしています。

Aサロン・ド・リリー事件(浦和地裁昭和 61.5.30 )

 美容院のインターンの中途退職の場合は、指導・講習費用を支払えという契約は退職の自由を不当に制限するもので労基法 16 条に違反するとされています。

 2.いわゆる「貸借契約」について

  労働者本人の希望で(業務命令でなく)、本来本人が負担すべき費用を使用者から借りて(立て替え金)、返還方法が労働契約の履行・不履行と無関係に定められ、単に一定の期間労働した場合は返還義務を免除したに過ぎない場合は、いわゆる「貸借契約」となり労基法第 16 条に抵触しないと考えられています。

裁判判例としては

@河合楽器事件(静岡地裁昭和 52 年 12.23 )

 会社の養成所の月謝を会社から「借り受け」て、養成所卒業後、会社に入社して従業員となれば退職時まで返済を猶予されるとした「契約」は、会社の貸与金は純然たる貸借契約として締結されたもので、雇用契約とは別個のものであり有効とされました。

 また他の裁判判例でも「一年間退職しないこと」が有効とされた判例がありますが、その場合も

 1.研修が労働者本人の希望 

 2.社内の社員優遇措置としての技能検定 

 3.研修費用が合理的な実費の範囲内であり、会社の「立て替え金」であること 

 4.期間も1年という短期間である等

をあくまで総合的に判断して会社の主張が有効とされていますのでこの場合も単純に「 1 年間」ならいいということではありません。



0815
< 研修期間中の労働条件 >

Q:就職が決まり、3ヶ月の研修期間に入りました。そのときに提示されていたのは、「研修は3ヶ月、保険は研修期間はつかない、残業手当・深夜手当てはないが初年度からボーナスを出す(それを残業手当とする)」程度でした。研修が始まってわかったのは、一日の労働時間は常に12時間を超え、長いときは14時間。最悪なときは、休憩すらないときも。これでは続けてもいずれ体を壊すだけだと判断し、研修期間だけでやめることにしてしまいました。ただ、やはりサービス残業は腹が立ちますし、働いた分の給料は私のものですし、受け取る権利はあると思います。自分なりに解決していきたいので、助言をお願いします

A:研修中でも試用期間中でも、正社員でもアルバイトでも、会社は労働基準法は厳守しないといけません。研修も通常の勤務となんら変わりません。

 1.会社は、残業代を労基法37条で決まっているとおり25%以上、休日労働は35%以上の割増賃金を絶対に支払わなければいけません。違反すれば、罰せられます。

 会社が、うちには残業代はないと言っても、それは違法ですので無効となります(労基法は「強行法規」ですので)。

 労働時間には、実際に作業に従事している時間のみならず、作業の準備や整理を行う時間、作業途中で次の作業を待って待機している時間(手待ち時間)も含まれます。

 2.夜10時から朝5時までの労働に対しては、深夜労働手当として最低でも二割五分を必ず支払わねばなりません。

 また、残業時間の延長として夜の10時すぎまで続く時は夜の10時から朝の5時までの分は残業代二割五分と深夜手当二割五分と併せて五割増が支払われねばなりません。休日出勤の場合は三割五分増です。休日出勤の残業の延長としての夜勤は6割の手当をださなければなりません。

 3.出来るだけ詳しい記録を作り、まず、最初に、会社に残業代等の支払いを請求して下さい。会社から支払いを拒まれたら、すぐに労働基準監督署に行き、労基法違反で申告して下さい。

 


0816
< パート労働者の正社員転換 >

Q:現在、パート(バイト)として、 1 日 8 時間(土曜は 7 時間、日曜は 6 時間)で週6日働いています。最近、今の会社より別を探して正社員として働けばいいのにと親から言われるのですが、今の会社が気に入っています。そこで正社員転換制度というのを聞いたのですが、それは全ての企業が対象なのでしょうか?今の会社で正社員になれたらいいのに、新しく入った正社員と同じ仕事をしてるのに正社員転換制度は適応されないのかなとか思います。正社員転換制度は法律で定められているのでしょうか。

A:メール拝見しました。

 そもそも、労働時間からみて、あなたが「パート」であるかどうかがまず疑問です。

 パート労働者とは、社員に比べて労働時間が短い方をいいます。一日8時間週6日というあなたは、実際は社員と同じ時間働いているといえます。そうであれば、賃金や昇給、退職金、一時金等の差別があること自体が不当といえます(パート労働法(「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」)8条・9条)。

 おっしゃる通り、パート労働法第12条では、会社に対して、「パートを正社員へ転換する」ための措置を義務づけています。

 その例としては、

★正社員を募集する場合、その募集内容を既に雇っているパート労働者に周知する。

★正社員のポストを社内公募する場合、既に雇っているパート労働者にも応募する機会を与える。

★パート労働者が正社員へ転換するための試験制度を設けるなど、転換制度を導入する。

となっています。

 しかし、残念なことにほとんどの会社ではこの法律は有名無実化している現状と言わざるを得ません。

 私たちは、パートさんたちや労働者自身が結束して声をあげて、職場で 労働組合をたちあげたり、地域の誰でも加入できるユニオンや労働組合にみんなで加入して会社と話し合うなどして改善を勝ち取る道をお勧めしています。


0817
< 突然の配転 >

Q:業務内容の変更についてお尋ねします。私は千葉市にある会社でパートタイム勤務をはじめました。契約内容は1日6時間程度・週3日程度という内容ですが、実際は1日8時間労働で、正社員の勤務状態により月9〜19日勤務と変則的なもので入社当時から現在まで変わりません。仕事の内容は正社員と同じ業務をおこなっています。先日、突然パートタイム勤務している人は現在の千葉の事業所付けから東京の本社付けとし、今後の仕事の内容も変更する、千葉の事業所で該当の仕事がない場合は他地域事業所への派遣もありうるという話を一方的に言われました。このように勝手に業務内容を制限されても受け入れなくてはいけないのでしょうか。拒否することはできないのでしょうか?

A:メール拝見しました。

 あなたの心配とお怒りはよく理解できます。

 裁判判例でも現在の日本社会での転勤・配転命令権は会社に有利にされ ているのが現状です。

 しかし、配転・転勤拒否の理由が労働者の側にとって「正当・相当」な合理的理由がある場合は、その転勤拒否は正当なものとされ保護されます。「正当・相当」な理由とは、労働者本人家族の病気・健康上の理由や家族の介護などの理由です。

 このような「正当・相当」な理由がある場合、転勤を拒否した労働者を不当に不利益扱いすることは違法行為となります。

 もう一つは、入社時の労働契約の中身によります。

 入社時の労働契約書の中に、具体的に就業場所(千葉市)が明記されてある場合には、労働者には千葉市以外への転勤を拒否する権利があります。

 もうひとつの考え方として「労働条件の一方的不利益変更」があります。

 そもそも、経営側が、労働者の労働条件を、一方的に不利益に変更することは許されていません。「労働条件の一方的不利益変更」は裁判の判例上でもやってはいけないこととして確立されています。

今回の場合も配転に伴う「不利益」がどの程度なものかによります。


0818
< 合併後の労働条件 >

Q:勤続20年の会社が業績不振を理由に、1年前より月4万ほど減給されました。

もちろん社員も仕方なく同意です。

100%出資している親会社も業績が悪く(親会社社員は減給はなし)、
今度合併することになりました。

子会社の私達が移籍するのですが…。

退職金、有休など そのままで移籍できないのでしょうか?

また、減給されたままの給与で計算という案が出ています。
(言い分では4月が給与改正の月だから途中で出来ない)

親会社では減給されていないのに納得いきません。

法律的に問題はありませんか?

A:吸収合併の場合には、存続会社がすべての権利義務を承継するという包括承継が原則となっています(会社法801条)。親会社が子会社を吸収合併する場合も同じです。
権利義務の中に、労働条件も含まれると解釈されています。

ですから、給与、退職金、有休休暇など、全て現在の条件は保証されるということになります。解雇したり、条件を引き下げることはできません。

では減給はそのままか。

法的には上記のとおりで問題があるとは言えません。

ここから先は、労働組合としての交渉や闘いによって、合併後の条件をどれだけ親会社に合わせるか、近づけるかということでしょう。

労働組合はありませんか?なければ作るということは考えられませんか?個人で加盟する労働組合(ユニオン)もあります。

これまでは子会社ということで条件に差があったかと思います。同じ会社になれば、同じ会社で同じ仕事をしていながら条件が違うということはおかしいということをみんなで話し合って、条件を揃えていく要求・交渉を行うことが必要だと思います。


0819
< 仕事の備品は自前で >

Q:基本的に備品は各自で用意するように言われています。

ボーンペンは用意したそうですが、それ以外はみな自前。

したがって備品のボールペンを使いづらい状況です。

パソコンは支給されましたが、これ以上のスペックが必要と思うのであれば、自分で用意するようにとのこと。

支給されたパソコンは動きがよくなくマウスも調子がよくありません。

今後新しいパソコンが必要となる可能性大です。

A:あいにくですが、実は備品の自己負担自体に法的な制限はないため、労働者の自己負担は許されます。

しかしその代わり、労働基準法第89条では、労働者に食費や備品の自己負担をさせるならば、その規定を定めて必ず
就業規則に載せなければならない、と使用者に義務付けています。

いずれにしろ会社との交渉は不可避と思われますので、会社やお住まいの近隣に労働者一人から加入できる労働組合(ユニオン)があれば、まずはそちらに相談を持ちかけ組合員となり団体交渉等の支援を仰いでみてはいかがでしょうか。

きっと、あなたのお話に真剣に耳を傾け適切なアドバイスをしてくれるはずです。


0820
< 妊娠中のレントゲン受診 >

Q:32歳女性です。

先月健康診断があり、妊娠の可能性があるためレントゲンの受診のみ受けませんでした。

その後、年内に再度レントゲンのみ受診するように人事部から依頼が来ました。

小職は、子供を望んでいるため常に妊娠の可能性があるためレントゲン受診の拒否をしたいのですが、人事部からはからならず受けるように言われてしまいました。

人事部の回答は、正社員全員の健康診断を受診させる義務があるとのこと。

調べる限りでは、健康診断時に妊娠の可能性がありレントゲンを受けなかったという方が後日受けてくださいと指示されている会社はないように思います。

いかがでしょうか?労働基準の観点からアドバイスをいただければと思います。



A:定期健康診断は一年に1回定期に労働者の健康を確保する目的をもって労働安全衛生法66条によって使用者に義務付けられています。また、同様に労働者も健康診断を受けなければならないとされています。

なお、使用者指定の医師の健診を希望しない場合は他の医師の健診を受け、その結果の証明書を使用者に提出することもできます。使用者は健診を怠ると罰則を課され、労働基準監督署の指導がなされますので、相談者である貴方に法に従うことを要求したものと思われます。

具体的な検査項目は労働安全規則44条で決められています。

その中には胸部レントゲンなど11項目ありますが、厚生労働大臣の定める基準に基づき、医師が検査の必要が無いと認めた場合は省略する事ができます。省略できる項目の中に、「妊娠中の女性その他の者であって・・・・」に該当する可能性がありますが、貴方のケースが「妊娠中の女性その他の者」に該当するのか、職場を管轄する労基署に確認する事をお勧めします。

はっきりした回答がない場合は、主治医とよく相談し受診できる時期(妊娠しない時期)の可能性があるのか、受診しないほうがよいのか確認し、その意見に従う事が現在考えられる最善の方法と考えられます。

労働安全衛生法によって労働者に健診を義務づけている趣旨は労働者の生命、身体の安全を確保することが目的ですので、結果として、その目的に反する場合は、実質的に判断せざるを得ないわけです。

現在、それがよく解るのは主治医と思いますので、その意見を尊重すべきと考えられます。


0821
< ダブルワークは禁止? >

Q:ダブルワークは労働法で禁止なんて決まりはあるのでしょうか?

社会保険加入して工場内でパート契約してます。

賃金も安く、2年前の勤務手当も貰えず、仕方なく知人からパート募集の情報からダブルワークしてます。

女性が固まる職場なので、ヤッカミや妬み強い傾向の職場ですが、プライバシーの噂も拡がりやすいので内緒にしてます。

今の会社は面接時に、次長から『ダブルワークしていい』と聞いたのですが、心配なので相談しました。



A:初めに相談者である貴方の内容に2年前の勤務手当が貰えず、やむなくダブルワークしているとのことですが、勤務手当がもらえないのが、その時だけの事なのか、その後継続しているのか明確ではありませんが、継続しているということになれば違法行為として、2年分の未払賃金を請求することができるでしょう。時効は2年ですので今請求することが必要です。

ダブルワークは就業規則によって禁じられているか、会社の許可が必要という事が一般的です。

法的な観点からは、必ずしもダブルワークが禁ぜられていません。

ダブルワークが禁ぜられる場合は、@疲労のため本業に差し支えること、A例えば風俗などで働いていた為会社の名誉を著しく貶めた場合、B1日8時間及び一週40時間を超えて労働させたなど労働基準法に違反した場合、等が考えられます。

なお、賃金が安いとの事ですが、都道府県別に最低賃金が毎年決定されいますのでご確認下さい。

以上の事を注意した上で、就業規則を確認の上、上司の許可を得た場合は問題ないと考えられます。


0822
< 朝礼で標語の唱和 止められないの? >

Q:新卒で入社し、現在9年目で事務職をしております。

営業が目標を達成した際に事務所内の職員全員で朝礼のようなものや、事務職員全員を集めての会議を行うことがあるのですが(年度はじめ、四半期決算後、年末年始等、年間に数回)、 ここ半年ほど、標語を全員で復唱させられます。

今までそのようなことがなかったため、すごく違和感と不快感を覚えます。

標語を復唱させる(その場で断れない雰囲気の中、言わせる)のは、マインドコントロールの一種だとも思うのですが、会社側に控えてもらうよう伝えることは、雇用されている者の立場として正当な行為なのでしょうか?

A:長年勤務されてきて、これまでになかった「標語の唱和」が行われるようになったことで、不快な思いをされてらっしゃるとのこと。

ただ、内容が社会的な通念や倫理、公序良俗に反するものでない限り、会社の指示で唱和すること自体、違法性は問いにくいといわざるを得ません。

もちろん、内容や唱和という行動が、ご自身の良心に反する場合、会社(上司)と交渉し、自分はそれに参加しない、というふうにすることは不可能ではありませんが、逆に、他の人たちの唱和を止めさせるよう、相談者さんが強制することもできません。

職場の責任者は、職場・企業の利益に結び付く何らかの目的を持って唱和を実施しているのでしょうから、不快という個人的な理由では納得させることは難しい。

責任者の狙いを妨げたということで、あなたの評価を下げることにつながる可能性が高いです。

そんなリスクを避けつつ職場全体の行動を変えるには、唱和自体が、責任者の意図に反し、企業の不利益になる、というような理由を見つけ、それを、責任者の面子をつぶすことなく納得してもらう、 そんな手続きを踏んでいく必要があると思われます。

ただ、この半年ほどの変化と言われていますが、もしかすると、あなたは、ここまではっきりとしているものではなくとも、今までと異なり、社員を抑えつけるような、そういう職場全体の雰囲気の変化について不快感を抱かれているのではないでしょうか?

だとすると、放置していると、さらに、職場は働きにくいものになってしまうリスクがあります。

まずは、そうした不満が他にもないか、職場の方々とそれとなく話し合われてみてはいかがでしょうか。

同じように、「耐えがたい」「このままでは厳しくなるかもしれない」と危機感を感じている方がいらっしゃる可能性もあります。

その場合、同じ思いを持つメンバー同士で労働組合をつくり、雇用者に対して環境の改善を求めていくという方法があります。

ぜひ、実践してみてください。


0823
<就業規則を見せてくれない >

Q:私が勤めている会社ですが、休みとか取る際にどのような規程があるか調べたく、就業規則を見せて欲しいと上司に言っても、見せてくれません。

ヒトによってはそれらしきものをもっている人もいます。

会社に言って見せてもらうことはできますか?

 

A:会社は、労働者10人以上の事業所で就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出なければなりません(労働基準法89条)。

また就業規則は労働者へ周知しなければならず、周知しなければ効力を持ちません(同106条)。

周知とは、労働者がいつでも見られる状態にしておくことで、具体的には以下のような方法があります。

・印刷された書面を各作業場の見やすい場所に備え付ける。
・労働者一人ひとりに就業規則を配布する。
・労働者が自由に使えるパソコンにデータを入れておき、いつでも確認できるようにしておく。

ご相談者には就業規則を開示させる当然の権利があります。

ついでながら、就業規則を入手したいという要求は、賃金や労働条件を確認したいということからだと思います。

会社は入社時に労働条件通知書または雇用契約書により労働条件を書面で明示しなければなりません(労働基準法第15条)。

採用時にこの書面は渡されたでしょうか。

なければこれも法律違反です。

ご自身で要求しても開示されなければ、明確な労働基準法違反です。

この場合、会社を管轄する労働基準監督署に申告することによって会社に是正指導をしてもらうことができます。

労働基準監督署は労働基準法違反を取り締まる公的機関ですが、あまり積極的に動いてくれないところもあります。

また一時的に是正指導をしてくれても、その後会社のなかの関係が変わらなければ同じことが繰り返される可能性が高いです。

会社のあり方自体を変える場合、一人から入れる労働組合(ユニオン)に入って交渉する道を考えてはどうでしょうか。

ユニオンに加入してユニオンとして交渉を申し込めば会社は拒否できません。

会社のなかで働く人の力が弱ければ、法律や就業規則に照らして無効でも、これを是正することは大変です。

会社のなかでの経営者との力関係が弱ければ、泣き寝入りしてしまうことになりかねません。

ユニオンに入る人数が多いほど大きな力になります。

私たちは、働きづらさの理由は会社の中で働く人の力が弱いところに大きな理由があると考えています。

それを乗り越えるためにユニオンの力を大きくすることが大切だと考えています。


0824
<婚約者の個人情報を提出させられた >

Q:わが社では、緊急連絡先の申告をさせる際に、個人情報が他人(同僚)にわかってしまうやり方で、用紙に氏名、住所、電話番号を記入させています。

また、私はまだ独身で、結婚を予定している者の氏名その他を記入しましたが、今になって考えたら少しおかしいのではないかと思い始めています。

一度記入して提出してしまいましたが、訂正または削除をさせることは可能なのでしょうか?

A:個人情報保護法第26条には、「訂正等の扱い」として以下のように規定されています。

「個人データの内容が事実でないという理由によって、保有している個人データの内容の訂正、追加、又は削除を求められた場合には、その内容の訂正等に関して他の法令の規定により特別の手続が定められている場合を除き、利用目的の達成に必要な範囲内において、遅滞無く必要な調査を行い、その結果に基づき、当該保有個人データの内容の訂正等を行わなければならない。」

これによれば、データの内容が事実と異なる場合のみ訂正、削除を要求することができるとなります。

また、会社側とすれば、労働者から利用停止を請求された場合でも「目的外利用をした場合、不正な手段で個人情報を収集した場合」のみ対応すればよいというわけです。

とは言っても、結婚予定の方の情報を削除して欲しいというお気持ちは十分理解できますので、削除義務は生じないことを踏まえたうえで、まだ、家族になっていないから会社の緊急連絡先には載せたくない旨を、作成部署の方とお話してはいかがでしょうか。

ところで、従業員情報=個人情報を直接取得するのですから、会社側から従業員本人に利用目的をあらかじめ明示された同意書が提示されましたでしょうか。この同意がなく行われている場合には、「利用停止」を申し入れることができるでしょう。

ちなみに、個人情報保護法は、個人の個人情報に関する権利を規定したものではなく、企業が、適切に個人情報を取り扱うことを定めた法律です。

個人情報があちこちに残ることを避けたいならば、アンケート等は書かないほうがよろしいかもしれません。

会社とのやりとりでギクシャクしそうなときは、一人から加入できる労働組合(ユニオン)に相談して、対処法等を伝授してもらったらいかがでしょう。


0825
<職場内の副流煙がつらい >

Q:現在事務のパート従業員として働く女性です。

職場の煙草の煙に関する問題で悩んでいます。

喫煙室が私の背後にあり、どんなに気をつけていても私のところまで煙が漏れてきます。

喫煙者が喫煙するたびに私が窓を開けに行くと、他のみんなから嫌な顔をされます。

あの煙を吸っていると頭痛もしてきます。

副流煙というのは簡単に消えるものではないと聞いたことがあります。

実際、きちんと換気されていない部屋にいると、なんだか頭が痛重く感じるのです。

以上のような状態ですが、私は不調を感じながら満足に部屋の窓を開けることも制限されて我慢しなければいけないのですか?

何か良い解決策はないでしょうか。

A:たばこを吸わない人にとって副流煙は大変つらいものです。

一時的な受動喫煙でも嫌なものですが、職場でとなると毎日の事ですので、大変つらい思いをしている事とお察し致します。

厚労省による健康増進法によって、職場などの受動喫煙の防止が規定されています。

健康増進法のみならず、労働契約法5条の安全配慮義務には「使用者は労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することが出来るよう必要な配慮をするものとする。」と規定されています。

同様に労働安全衛生法3条にも「快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。」とされており、労働環境改善義務が課されています。

対策ですが、まずは、職場の上司や同僚に、副流煙の吸引が苦痛でありご自身の健康にとって本当に深刻な問題である旨、理解を求めることからはじめてみてください。

それでもラチが明かなければ、あなたの地域の労働局の総合相談コーナーにあっせんや是正指導を要請してみてはいかがでしょうか。

他の有力な方法はお近くにある一人でも入れる労働組合(ユニオン)に加盟し、その支援を受けて交渉することです。

ユニオンには憲法や労働組合法によって保障されている労働三権がありますので、あなたにとって心強い味方になってくれると思います。

労働三権の一つである団体交渉権は会社は拒否することができませんので、あなたの意向を汲んで話し合うよう求めてみるとよいと思います。


0826
<「身元保証書」を出せ? >

Q:会社から「身元保証書」の提出を求められそうです。

当社には就業規則はありません。

腑に落ちないのは、就業規則もないような会社なのに、何か会社の損失が生じた際、従業員や身元保証人が賠償しないといけないのか?経営者のもしもの時の都合を良くする為だけのものである様な気がしてならないことです。

どの様な会社でも、「身元保証書」を従業員に提出させることは可能なのでしょうか?

「身元保証書」について注意すべき点等あれば教えて下さい。

A:身元保証契約の締結を要求することと、会社の規模は関係ありません。

ただし、身元保証契約は入社に際して締結することが一般的です。

さらに、契約とは当事者双方の合意があって初めて成立するものです。

当事者の一方が契約内容に納得できない場合は、契約締結を断ることもできます。

なお、「身元保証に関する法律」では、身元保証人の責任は通常3年、期間を定めた場合でも5年を超えることができないとされています。


0827
<冷房を入れない社長 >

Q:会社のなかが暑いんです。

社長は、工場はしっかり効かせているくせに、事務所の冷房をなかなか入れようとしません。

社長にとって大事なお客さんが来たときだけつけるんです。

もうガマンの限界に近づきつつあります。

どうしたらいいのでしょう?

A:労働契約法5条の安全配慮義務には「使用者は労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することが出来るよう必要な配慮をするものとする。」と規定されています。

同様に労働安全衛生法3条にも「快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。」とされており、事業者(会社)には労働環境改善義務が課されています。

まずは、職場の上司に熱中症等の健康にとっても深刻な問題である旨、理解を求めることからはじめてみてください。

それでもラチが明かなければ、あなたの地域の都道府県労働局(厚生労働省の地方出先機関)の総合相談コーナーにあっせんや是正指導を要請してみてはいかがでしょうか。

他の有力な方法としましては、会社やお住まいの近隣に労働者一人から加入できる労働組合(ユニオン)があると思いますので、そちらに相談を持ちかけ組合員となり団体交渉等の支援を仰いでみてはいかがでしょうか。

きっと、あなたのお話に真剣に耳を傾け適切なアドバイスをしてくれるはずです。


0828
<定期健診で「要治療」 どう対処したら? >

Q:介護老人保健施設に勤務している理学療法士です。

職場で毎年行われる定期健康診断についての質問です。

私は以前、体調不良で病院に行った時、内視鏡検査で異常が見つかり、精密検査を受けることになりました。

その検査の結果、私の体は危険な状態ではなく、治療の必要はない、と診断されました。(その時、診断書を書いてもらい、今でもそれを保管しています。)

そこで質問ですが、職場から「要再検査」や「要治療」などを言われた場合、法律的にはどのように対処するのが正しいのでしょうか?

精密検査の後に医師に書いてもらった診断書を提出すれば、それで済むのでしょうか?

それとも、職場からの指示に従わなければならないのでしょうか?

A:定期健康診断については労働安全衛生法(労安法)及び関連法令に規定されています。

健康診断の結果、要精密となる場合もよくあります。

事業者の義務として労安法66条により労働者に対し健康診断をおこなわなければなりません。

同条5項により事業者指定の医師の健診を希望しない場合は他の医師による規定に相当する健診を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出すればよいことになっています。

従ってお持ちの診断書を提出すれば済みます。

又、労働安全衛生法規則43条には雇い入時の場合も同様の規定があります。


0829
<入社してすぐに子会社へ転籍>

Q:求人内容をみて給与や賞与などがいいと思い入社したのですが、1か月後に新会社を設立するから、そちらへ移れと言われました。

最終面接の時点で新会社の話はチラッと聞きましたが、給与や待遇に関してはなにも説明はありませんでした。

入社してみて先輩方に新会社の話を聞く機会がありました。

現状の基本給や手当てなどがなくなり、完全歩合制になると言われました。

賞与はほぼなくなる。

給与も下がるらしいです。

こういった場合でも、新会社に移るしかないのでしょうか?

A:ご相談内容は、「転籍」の問題と判断し、ご回答致します。

最初に注意事項をお伝えさせて下さい。

ご質問のメールを拝見する限り、出向の問題だと思われます。

出向には2種類あり、出向元(現在の会社)との雇用関係を維持しながら、出向先(新会社)と雇用契約を締結する「在籍出向」と出向元(現在の会社)を退職し、出向先(新会社)と新たに雇用契約を締結する「移籍出向(=転籍)」があります。

【転籍について】

転籍とは、元の企業との労働契約関係が終了し、新たに他の企業との労働契約関係に入ることを指します。

従業員の個別的な同意が必要なので、企業が一方的に転籍を命令することは認められません。

ですので、転籍の場合であれば、労働者が同意をしない限り、転籍をさせることはできません。

※「在籍出向」の場合にも、労働者の同意が必要となりますが、判例上、「包括的な同意」で構わないとされており、例えば、就業規則に「在籍出向」を命じることがあるとの記載があり、その就業規則が周知されているのであれば、「包括的な同意」が成立していると判断されることがあります。

ですので、ご相談者様が転籍に応じるつもりがないのであれば、同意をする必要はありません。

会社には一方的に転籍を命じる権利はない訳ですから、強制的に転籍させることはできませんし、拒んだことを理由に不利益な取り扱い(例えば解雇等)をすることは、許されないことになっています。

【対応策】

下記相談窓口を紹介いたします。

また、一人から加入できる労働組合(ユニオン)も紹介しております。

外部の労働組合であれば、労働者の権利を守る為、最後まで頑張ってくれるのではないかと思います。

【相談窓口】

下記の相談窓口の相談してみてはいかがでしょうか。

■ 総合労働相談コーナー

こちらは、行政が設けている民事紛争解決窓口です。

無料で利用することができます。

http://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html

■ 日本労働弁護団

労働法を専門とする弁護士が、労働相談に応じてくれます。

こちらも無料です。

http://roudou-bengodan.org/

■ 労働組合への加入

お住まいの近隣に労働者一人から加入できる労働組合(ユニオン)があれば、まずはそちらに相談を持ちかけ組合員となり団体交渉等の支援を仰いでみてはいかがでしょうか。

きっと、あなたのお話に真剣に耳を傾け適切なアドバイスをしてくれるはずです。


0830
<もう限界!4年を超える海外での単身赴任>

Q:私はベトナムに単身赴任しています。

海外駐在は既に16年になり、単身赴任となってからは4年半となります。

4年半前に家族(妻,長男,次男)を日本に帰国させたのですが、その直後から長男(現在高校1年生)と次男(現在中学2年生)が不登校になりました。

上司には転勤を強く要望(毎年文書でも提出している)しているのですが、“個人的な問題”であり、かつ“後任者が不在”との理由で誠意ある対応は全くありません。

私の立場は現地法人の代表者であり、後任の選任には時間がかかると言われておるのですが、既に4年以上経過しているにも関わらず、対応が無いことに苛立ちを覚えております。

現況が続いた場合、妻が一人で耐えられるかどうかを懸念しています。

私の様なケースで会社に対し、転勤を希望する事が非常識なのでしょうか。

法的若しくは人道的な問題として、会社の対応には非が無いと言えるのでしょうか。

A:転勤を希望することは決して非常識ではなく、家族の状況を考えれば当然のことと思います。

社員の希望を全く無視して人員配置ができるわけではないと考えられます。

たとえば、労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を及ぼすような転勤命令は、権利の濫用として無効となります。

この考え方を応用すると、ご相談のケースも、帰国希望がかなえられないことが、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を及ぼす場合は、会社の対応に問題が生じる可能性があります。

ちなみに、配置転換命令に関する判例では、
・病気の家族3人の面倒を自ら見ていた場合
・病気の子ども2人と近隣の体調不良の両親の面倒を妻と2人で見ていた場合
・子ども2人を共稼ぎの配偶者とともに看護していた場合
などが「著しい不利益を負わせる」と判断されています。

逆に、配転によって、
・単身赴任せざるを得なくなる
・子供の送迎等に支障が生じる
などは「著しい不利益とまではいえない」とされています。

今回の件は、
・異動命令ではなく、あなたの方から異動したいという希望であること
・現地法人の代表者という要職であること
などから、「労働者が甘受すべき程度」は一般社員の異動命令に比べて高くなるのは事実かと思います。

一方で、
・海外勤務が16年という長期間続いていること
・海外という遠隔地であり、家族のケアが困難なこと
・4年間にわたって事情を説明し、希望を出していること
から、「不利益の程度」も高いと想定されます。

また、別の観点から付け加えますと、育児・介護休業法26条で、労働者の配置転換にあたっては育児・介護の状況に配慮するよう義務付けています。これに基づく指針では、「労働者本人の意向を斟酌すること」も求めています。

なお、配慮の対象となる子の年齢は制限されていませんので、中学生も含まれます。

さらに、労働契約法3条では、労働契約は、労働者および使用者が仕事と生活の調和に配慮して締結すべきことを定めています。

会社の対応に法的な問題が生じるかどうかは、これらのことや会社の規模、組織体制、海外勤務の実態などを具体的に検討し判断することになりますが、いずれにしても、このままの状態では、仕事にも差支えが生じると思われますので、
・上記を参考に、「個人的な問題」として片づけられず、会社も社員の配置には一定の配慮が求められること
・次善の策として、特別の休暇や帰国の費用負担を認めるなどの措置を図ること等の話し合いを持たれてはいかがかと思います。

それでも回答が得られない場合、改善が見られない場合や、会社側が適切な対応をとらない場合、会社の対応に納得がいかない場合には、公的な相談窓口として、労働基準監督署や都道府県労働局の総合労働相談コーナー等に相談することをおすすめします。

また、お住まいの近隣に労働者一人から加入できる労働組合(ユニオン)があれば、そちらに相談を持ちかけ、組合員となり団体交渉等の支援を仰いでみることも有効です。

 



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