こんなときどうする
労働相談Q&A
 

 

 


06労働時間


0601
<裁量労働って何?>

Q: 毎月100時間を超える時間外労働をしているのですが、会社は裁量労働だと言い残業代が全くありません。でも仕事内容は全然裁量労働ではありません。毎日上司からその日の業務内容が指示されます。

A: 裁量労働制は、実際の労働時間と関係なく労使であらかじめ定めた時間を働いたものとみなされる制度であり、業務の性質上、業務遂行の手段や方法、労働時間の配分などを基本的に労働者の裁量にゆだねる場合に適用できるというものです。残業するか、しないかも含めて労働者の裁量にゆだねるわけですから、会社が労働時間に関する指示を出したり、残業の命令を行う場合は「裁量労働制」に該当しません。

 従って、残業の指示や労働時間に関しての指示が会社から及んでいるようであれば、裁量労働制は無効となり、通常の残業代の支払い義務が会社には発生します。

 また、裁量労働制だからといって、青天井に残業をさせていいわけではありません。厚生労働省の告示「時間外労働の限度に関する基準」では、1ヶ月間の残業の上限は 45 時間とされ、労使協定ではこの限度時間を超えないものとしなければならないとされています。この点で言えば、メールにある「100時間を超える残業」というのは、裁量労働制下であっても問題となります。

 裁量労働制を導入できる業務は専門業務型と企画業務型に限定されています。これらの業務を対象にこの制度を導入する場合には、さらに「裁量労働の時間」(1日あたり、何時間労働したとみなすのか)や対象者の範囲などを決めた「労使協定」(過半数労働組合もしくは労働者の過半数を代表する者との間で締結)を結び、それを所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。また、上記の「裁量労働の時間」が1日8時間を超える場合には、 36 協定の締結が必要であり、超えた分の残業時間に対しては残業代が支払われなければなりません。また、深夜や法定休日に勤務した場合は、それぞれ法で定められた率以上の割増賃金が支払われなければならないことはいうまでもありません ( 労基法 38 条の 3) 。 

上記の要件が満たされていない場合には、裁量労働制そのものが無効となります。まずは上記の要件が満たされているかどうかを確認するべきかと思います。

 また、労使協定が適正に締結されているとしても、実際の労働時間が「裁量労働の時間」を恒常的に超えているようであれば、トータルとしての残業代の支払い義務が会社には発生する点も留意が必要です。

 以上の点を踏まえて、あなたの業務内容、働き方、会社の就業規則、労使協定の有無などを点検してみてください。これらの裁量労働制の要件を満たしていなければ、法定労働時間 (1 日 8 時間、 1 週 40 時間 ) を超えた分は全て残業ということになり、残業手当の支払いを請求することができます。この残業手当の請求権の消滅時効は 2 年ですから、 2 年分を急いで計算し請求してはどうでしょうか。あなたが請求しても会社が支払ってくれない場合には、所轄の労働基準監督署に「申告」し、会社に対する勧告、指導を行うよう求めることができます。

 


0602
<老人のグループホームの介護職員。実際は深夜労働なのに宿直扱い>


Q: 老人のグループホームの介護職員をしています。仕事自体は好きですが、納得できません。週に何回か 16 時 30 分から翌朝の8時まで「宿直」とされ少しの宿直手当は付きますが、実際は昼と変わらない老人の介護労働が続きます。夜 10 時から朝5時までは深夜手当の割増賃金をだすべきです。深夜労働時間としたらその他の労基法にも違反していると思います。

A: このグループホームでは、たぶん表向きは「夜勤」ではなく「宿直」扱いとしているのではないかと思われます。「宿直」の場合は労働時間として計算されません。しかし、労基法上の「宿直」とは、構内巡視、電話の取り次ぎ、待機など、常態としてほとんど労働する必要のない「監視又は断続的労働」のことです。この「宿直」扱いにするためには労働基準監督署の許可を受けなければなりません ( 労基法 41 条 ) 。 

 ところが、グループホームをはじめとする多くの介護職場では、実際は昼間と全く変わらない、むしろ深夜ですから、昼間よりつらい介護や利用者の面倒をみる労働を余儀なくされており、「宿直」というようなものではなく、実質的には「深夜労働」「夜勤」に該当している場合が圧倒的であるのが実態です。 

 あなたの働き方もこの例に該当し、「宿直」とは名ばかりの実態は「夜勤」ではないかと思われます。そうだとするならば、それは 1 日 8 時間、週40時間という現行の労働時間制度の中にきちんと組み込まれなければならず、これを超えて働いた場合には時間外手当が支払われなくてはなりません。さらに、16:30〜8:30という「夜勤」を週に何回かこなしているということは、変形労働時間制を採用していることになります。この場合は、労使協定の締結と労働基準監督署への届出が必要とされています。

 労基署から「宿直」の許可を得ているか、法定労働時間を守っているか、残業手当や深夜労働手当、休日手当ては払われているか、変形労働時間制の労使協定はどうなっているか、労基署に届けているか、などについて点検をしてみてください。多くの労基法違反が見えてくると思います。

 

0603
<自社の社員を休日に「アルバイト」で使う?>

Q: うちの会社は忙しい時、土日休みに別の部の社員を「アルバイト」として希望者を募集し、「アルバイト代」を払い使用しています。「アルバイト代」は休日出勤手当より安いです。これって合法?

A: 就業規則等で特段の定めがない限り、労働者が生活のためにダブルワークをすることは許されています。従って、会社が別の会社の労働者をアルバイトとして雇うことは別に違法とはなりません。

 しかし、お尋ねの件は明らかに労基法違反です。例え希望者だけであっても、もともと使用者と労働者はそれぞれが同一人ですから、別個な「労働契約」とは認められません。別の部署からの社員であっても、労基法38条は「事業所が異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と定めています。当然、週40時間を超えた休日出勤は割増賃金が支払われなければなりません。会社に「けちなことを考えるな」と言いましょう。

 


0604
<ヘルパーの利用者宅の相互間を移動する時間が賃金とならない>

Q: ヘルパーをしています。仕事自体は好きです。朝事務所に出勤して利用者宅に出向き介護を行っていますが、利用者間を移動する時間がトータルで2時間もかかります。時給契約ですが、事務所は移動時間は賃金として計算しないといいます。もともと安い賃金なのに、これでは時間ばかりかかり賃金も安いままです。納得できません。

A: ヘルパーなど訪問介護労働者が利用者間を移動する場合、その時間が労働時間としてカウントされず、賃金が支払われなければそれは労基法違反となります。

 厚生労働省は、 2004 年に「訪問介護労働者の労働条件の確保に関する通知」(基発第 0827001 号)を出し、その中で労働時間の取り扱いについて以下の見解を示しています。

 ○移動時間 事業場・集合場所・利用者宅の相互間を移動する時間の取扱い「使用者が、業務に従事するために必要な移動を命じ、労働者がその時間を自由に利用できないときは労働時間に該当する。たとえば、事業場→利用者宅や利用者宅→次の利用者宅の移動時間で、その時間が通常の移動に必要な時間程度であれば該当する(労働者の判断で寄り道していない)。」

 ○業務報告書等の作成時間「その作成が介護保険制度や業務規定等により業務上義務付けられているものであって、使用者の指揮監督に基づき、事業場や利用者宅等において作成している場合には、労働時間に該当する。」 

 ○待機時間「使用者が急な需要等に対応するため事業場等において待機を命じ、当該時間の自由利用が労働者に保障されていないと認められる場合には、労働時間に該当する。」 

 ○研修期間「使用者の明示的な指示に基づいて行われる場合は、労働時間」「研修を受講しないことに対する就業規則上の制裁等の不利益な取扱いがある場合や研修内容と業務との関連性が強く、それに参加しないことより、本人の業務に具体的に支障が生ずるなど実質的に使用者から出席の強制があると認められる場合などは、労働時間。」

 以上の点を参考に労働時間の改善について使用者と話し合ってみてください。また、これまで賃金が支払われなかった分については、 2 年前まで遡って請求できます。使用者が応じてくれない場合には、所轄の労働基準監督署に「申告」という手続を取ることによって、グループホームへの勧告、指導を求めることも可能ですから検討してみてください。

 


0605
<休憩時間の外出は上司の許可が必要か>


Q: いままで昼食の休憩時間は自由に取れました。近くの公園のベンチで昼寝もできました。ところが、近頃、新しい上司が、「外出は上司の許可を取れ」「すぐ呼び出せる場所にいろ」といいだしました。

 

A: 労基法上付与を義務付けている休憩時間とは、いわゆる「手待時間」は含まず、労働者が権利として労働から離れることが保障されている時間であるとされています(昭和22年9月13日労働省 基発第17号)。

 ですから休憩時間は当然労働者に自由に利用させなければなりません。しかし、一方で「休憩時間の利用について事業所の規律保持上必要な制限を加えることは、休憩の目的を損なわない限り差し支えない(同上)として、「休憩時間上の外出について所属長の許可を受ける」ことは「自由に休憩し得る場合には、違法とはならない」としています(昭和 23 年 10 月 30 日労働省基発第1575号)。

 つまり、本件の場合の「休憩場所の指定」が「待機・手待時間」のためであれば、本来の休憩時間ではなく労働時間となり、賃金が支払われない場合は違法となりますが、職場秩序との関係での処置であれば、会社のいい分が通る場合もあるということになります。

 

0606
<フレックスタイム制>

Q: 会社が突然フレックスタイム制を導入したいといってきました。この制度は、社員が出退勤を自由に決めることができる制度だと説明されたのですが、どのような制度なのかもう少し詳しく教えていただけませんか?

A: フレックス制は、1ヶ月以内の一定期間の総労働時間を定めておき、労働者がその範囲内で各日の始業及び終業の時刻を選択して働くことにより、労働者がその生活と職業との調和を図りながら、効率的に働くことを可能にするものを言います。

 労働基準法上 ( 第 32 条の 3) のフレックスタイム制を採用する場合は、

 1.就業規則で、始業及び終業の時刻を労働者の決定に委ねる旨の定めをすること。

 2.労使協定で、対象となる労働者の範囲、清算期間、清算期間中の総労働 時間、標準となる1日の労働時間を定めておくことが必要とされています。

 この制度は、決められた範囲内で始終業時刻を労働者自身が決定できるため、労働以外の時間を有効に使えるというメリットがあります。しかし、一方で使用者が残業代の削減を目的にこの制度を悪用しようとすることも考えられますので、導入に当たっては十分に注意する必要があります。

 


0607
<タクシー運転手の労働時間規制>

Q: 私はタクシーの乗務員です。現在の勤務時間は次のようになっています。 

  ●1日目  AM7 : 00 〜 PM8 : 00 (拘束 13 時間) 

  ●2日目 AM8 : 00 〜 AM0 : 30 (拘束 16 時間 30 分)

  ●3日目 休み  

このローテーションで 1 ヶ月勤務の繰り返しとなっています。2日 (29 時間 30 分)勤務で1日休みとなっていますが、この勤務時間は労働基準法上、問題ないのでしょうか?又この業種なりの特別規定があるんでしょうか。

 

A :タクシー運転手の労働時間に関しては、厚生労働大臣告示第 7 号「自動車運転手の労働時間の改善のための基準」が策定されています。

 1、タクシーの隔日勤務者の場合

   1)一ヶ月の「拘束時間」は 262 時間以内でなければなりません。

     特別な事情がある時は、労使協定で 1 年のうち 6 ヶ月は各月 270 時間まで延長まで延長することができます。

   2) 2 歴日の拘束時間は 21 時間以内とされています。

     また勤務終了後、連続 20 時間以上の「休息時間」を与える必要があります。

 2、タクシー運転手の日勤勤務者の場合

   1)一ヶ月の「拘束時間」は 299 時間以内。

   2)一日(始業時刻から起算して 24 時間)の拘束時間は 13 時間以内(延長する場合でも最大 16 時間まで)

   3)勤務終了後の「休息時間」は連続 8 時間以上とすること。

 3、車庫待ち特例(車庫において客を待機する就労形態)

   1)一ヶ月の「拘束時間」を 322 時間まで延長可能。

   2)1回の勤務の「拘束時間」を 24 時間まで延長可能。

    勤務終了後、継続 20 時間以上の「休息時間」を与えること

    一日の「拘束時間」が 16 時間を越える回数は一ヶ月 7 回以内であること同 18 時間を超える場合は、夜間 4 時間以   上の「仮眠時間」を与えること。

  注意

(1) 「拘束時間」とは、労働時間と休憩時間・仮眠時間を含む合計の時間

(2) 「休息時間」とは勤務と勤務の間の時間、睡眠時間を含む労働者にとって全く自由な時間



0608
<休憩時間中の仕事>

Q: 私の課は、昼の休憩時間に、机の上で食事をとりながら、電話をとりながらの休憩です。昼に電話がかかって来ない日はないし、電話の数も大変多いのです。さらに、入社した順で食事の準備、お茶入れ、食後の机ふき、フロアのゴミ箱のゴミ集め、ポットとお茶の片付けがあります。会社側は、「うちみたいな民間企業で昼に電話に出ない会社なんてないよ」とのことでした。なぜ昼休みがきちんと取れないのか、という単純な問題だと思うのですが・・・。なにかアドバイスいただきたく思います。

A: 労基法第 34 条で、労基法上付与を義務付けている休憩時間とは、いわゆる「手待時間」は含まず、労働者が権利として労働から離れることが保 障されている時間であるとされています(労働省 昭和??年基発第17号)。ですから休憩時間は当然労働者に自由に利用させなければなりません。

 「食事をとりながら、電話をとりながらの休憩です。昼に電話がかかって来ない日はないし、電話の数も大変多いのです。さらに、入社した順で食事の準備、お茶入れ、食後の机ふき、フロアのゴミ箱のゴミ集め、ポットとお茶の片付けがあります。」とあります。

 これでは「労働から離れている」とは到底言えませんので、完全に労働時間となります。明らかに労基法 34 条に違反していますし、また、その「労働時間」に対しては正当な賃金を支払う義務も生じてきます。

 


0609
<仮眠時間と労働時間>

Q: 私は、発電所の警備を担当する会社に勤めております。
まず拘束時間の事ですが朝8:30〜翌日8:30までが勤務時間です。6時間の仮眠時間がありますが、緊急時には、起きて対応するように言われています。しかし拘束しているにも関わらず賃金の労働時間にはならず、無給扱いです。にもまして翌日の非番はなくして半強制的に時間外勤務ということで夕方17:30まで勤務を連続勤務33時間をほぼ毎勤務繰り返されています。始業時間が8:30にも関わらず朝礼は8:00からで遅れると遅刻扱いを受けます。
次に時間外労働の事です。前に書いた通り、時間外の時間が過酷な状態が昨年から約半年続いています。36協定は結んでいますが、一月に100時間を越える者がほとんどです。当社に労働組合は、ありません。最近では、法定休暇日まで返上して出勤まで本人の了承もなく勤務表に記載され、やむなく勤務している状態です。一月に2回か3回休日があればいい方です。当然有給休暇はありますが取らせて貰える状態じゃありません。
会社側としては、人員不足なのだから我慢してくれと言ってますが今後のことは打開策は一切提示されていません。このままでは過労が重なるだけでやり切れません。どこまでが合法なのか違法なのか教えて頂きたいのですがよろしくお願いします。

 

A: 仮眠時間における実働に対しては、きちんと賃金を支払わないといけません。

 最高裁は「仮眠室における待機と警報や電話等に対して直ちに相応の対応をすることを義務付けられている」仮眠時間について、「本件仮眠時間中は不活動仮眠時間も含めて被上告人の指揮命令下に置かれているものであり、本件仮眠時間は労基法上の労働時間にあたるというべきである。」と判断しています(大星ビル管理事件、平成14.2.28)。緊急時には、起きて対応するように言われてるのであれば指揮命令下にあるわけですから、労働時間にあたり、賃金は支払われなければなりません。

 非番の日を強制的に残業と称して働かせることは明らかに違法行為と考えられます。

 厚生労働省の告示「時間外労働の限度に関する基準」では、1ヶ月間の残業の上限を 45 時間としています(限度時間を超えて労働時間を延長しなければならない特別の事情(臨時的なものに限る。)が生じたときに限り、労使協定があれば延長は可能)。

 「一月に100時間を越える者がほとんど」というのは「特別の事情(臨時的なものに限る)」に該当しませんから、違法な残業と言えます。

 「始業時間が8:30にも関わらず朝礼は8:00からで遅れると遅刻扱い」であれば、この30分間は労働時間となります。最高裁も「労働者が、就業を命じられた業務の準備行為等を事業所内において行うことを使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされたときは、当該行為は、特段の事情のない限り、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができ、当該行為に要した時間は、それが社会通念上必要と認められるものである限り、労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)三二条の労働時間に該当する」と判断しています(三菱重工長崎事件、平成 12.3.9 )。

 拘束 33 時間、月に2回か3回の休日。有給休暇もとれないなど、とんでもない許しがたい労基法違反です。労働時間は、あくまで週 40 時間が原則です。

 労使協定で締結しているであろう「変形労働時間」からも大きく逸脱していると考えます。

 会社が「警備」業務は、労基法 41 条の「宿直・日直」と同じ「労働時間の適用除外」の「監視または断続的労働」に該当していると主張する場合があります。しかし、この場合は次のような厳しい要件を必要とされています。 

 厚生労働省平 5.2.24 基発 110 号

  1)常態として身体の疲労・緊張の少ないこと

   (立哨・荷物の点検、車両の誘導、常態としてモニターでの監視はだめ、環境が危険でなく、温度・湿度・騒音・粉塵など有害でないもの)

  2)一勤務の拘束時間は、 12 時間以内であること。

  3)巡視の回数は一勤務6回以下であり、巡視一回の所要時間は一時間以内であること。

  4)勤務と勤務の間には 10 時間以上の休息期間(睡眠時間を含む労働者の自由な時間)をおくこと。

 


0610
<どこまでが労働時間?>

Q: 村の機関に臨時職員として勤務しています。完全週休2日制ですが、土曜日にも勤務することになりました。しかし、給与明細を見ると、土曜日に出勤した分も平日の日給と変わりませんでした。また、月に2日、5時以降にボランティアと称して清掃活動があり、その後に飲み会があるのですが、半強制的でいやでなりません。また、勤務時間が8〜5時なのに、15分ほど前にきて、掃除をしなければいけません。法的には問題ないのでしょうか。

A: 1日8時間、週40時間を超える労働時間は全て残業時間となり、割増賃金を支払う必要がありますから、土曜の勤務には25%以上の割増賃金が支払われるべきです。

 労働時間は{労働者が使用者の指揮命令の下におかれている時間}と位置づけられており(祭高裁判決 2000 年 3 月 9 日・三菱重工長崎造船事件)、実際に作業に従事している時間のみならず、作業の準備や整理を行う時間、作業途中で次の作業を待って待機している時間(手待ち時間)も含まれます。

 「勤務時間が8〜5時なのに、15分ほど前にきて、掃除をしなければ いけません。」は、使用者に指揮命令による清掃ですから労働時間に含まれないといけません。

 月 2 回のボランティアについてですが、裁判判例や労基法では使用者の支配拘束下にあって指揮命令に服している場合には、労働時間とされます。その判断は次のどれかに該当するかどうかによります。

  1.業務命令で命ぜられた場合。

  2.職務内容に関するもの。

  3.職場環境や規律の維持向上に関すること。

  4.安全衛生や労基法等職場環境の保持に関すること。

  5.参加が労働者の自由任意でないこと。

  そもそも飲み会への参加が「強制」ということであれば、 5 項目に該当し労働時間としなければなりません。

 


0611
<「名ばかり管理職」と時間外の会議>

Q: 昇進し管理職になりました。当社では、管理職には残業手当が支給されません。このような中、管理職の会議は就業時間(8:30〜17:30)外や休日に行なわれますので、自分の時間が削られ、苦慮しています。そこで、次の2点についてご教示いただきたいと思います。

  1.管理職に対して残業代を支払わなくてもよいという、法的な解釈

  2.就業時間外の会議召集は法的に問題ないか?

以上宜しくお願いします。

 

A: 1.管理職の残業代について

 労働基準法では、「監督若しくは管理の地位にある者(管理監督者)」は労働時間等に関する規定の適用除外を受けますが、労基法上での正確な意味で「管理監督者」であるかどうかは、「一般的には、局長、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にあるものの意であるが、名称にとらわれず、出社退社等について実体的に判断すべきものである」(厚生労働省)となっています。

 つまり、職場で「工場長」「部長」と呼ばれていて、役職手当がでていても、「採用などの人事や労務管理の権限を与えられておらず、経営者と一体的な立場にあるとは認められない人」、もしくは「出退勤を自分の裁量で管理していない人=管理職であっても、タイムカードなどで出退勤を管理されている人」は、法律では管理監督者とは認められません。

 上記の要件に該当しないのであれば、「管理職」に対しても会社は残業代を支払う義務が発生します。また深夜手当ては「管理監督者」であっても絶対に支払わないと違法です。この場合、管理職、非管理職は関係ありません。

 2.終業時間外の会議について

 厚生労働省の見解や裁判判例では「実習」「教育・研修・訓練」「会議」が使用者の支配拘束下にあって指揮命令に服している場合には、労働時間とされます。

1)  業務命令で「会議」を命ぜられた場合。

2) 「会議」が職務内容に関するもの。

3) 「会議」への参加が労働者の自由任意でないこと。

 このような「会議」や「実習」の場合で時間外労働が行われた場合は、当然正当な労働時間への対価を支払うべきです。残業代は支払わねばなりません。また法定休日の休日出勤の場合は3割5分増しの休日出勤手当てを支払う必要があります。

 


0612
<製パン業の労働時間>


Q: 有限会社のパン屋さんで働きはじめました。バイトの時間は夜 9 時〜朝 9 時まで、週一回休み、休憩30分です。休憩は1時間となっているのですが、社員も皆30分しか取らないから、自分も取れないで、約11時間半たちっ放しです。週6で 11 時間半労働、どう考えてもおかしいです。トイレもろくにいけません。パン製造なら労働基準法が適用されないのでしょうか?

A: 一日8時間、週 40 時間の労働時間の規定の適用を除外する労基法 41 条「労働時間等に関する規定の適用除外」の中で「三、監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁(労基署)の許可を受けたもの」があります。

 製パン業は、昔から「醗酵時間」を入れるために、「待機時間」「手待時間」が多い業務とされており、この労基法第 41 条の三に該当する業種とされています。この場合は、拘束時間を12時間以内としてもいいとされています。

 しかし、すべての「製パン業」が労基法 41 条の三に該当するかどうかは厳密な判断が必要とされます。つまり、本当に「待機時間」「手待時間」なのかどうか、実際は「実労働」をさせられているのではないか。

 本ケースのように「約11時間半たちっ放し。トイレもろくにいけない」が本当だとしたら、実労働を11時間半も行っていることになりますので、労基法第 41 条の「断続的労働」に該当するはずがありません。

 製パン業が「労基法 41 条」に該当することを悪用して実際は「断続的労働」でなく「実労働」として12時間も拘束しているとしたら、とんでもない違法行為ということになります。

 労基法 41 条として拘束 12 時間を実行させるには、「断続的労働」としての許可を労基署からとる必要があります。実際は「実労働時間」で「断続的労働」でない場合は、製パン業であっても許可してはいけないことになっています。

 会社が労基署に届ける時、「待機時間」「手待時間」が多いと虚偽の報告をして許可を得ていることも考えられます。

 労働者自身が、労働基準監督署に労基法違反であるとして申告し、是正させる方法もあります。

 労基署が労基法41条に該当しないと判断した場合は、当然実労働時間として扱われ、一日 8 時間、週 40 時間の原則で行わないと違法となります。その場合は、いままで働いた分を残業として扱い、割増賃金を支払わないと違法となります。

 職場で労働組合を立ち上げ、労働組合(員)として労基署に申告・告発して是正させていくことが一番の道だと考えます。実労働が 12 時間だとしたら「過労死」も他人事ではなくなります。ぜひ一刻も早い是正を勝ち取ってください。



0613
<「研修」の取扱い>

Q: 会社から2名で2週間ほど研修に出かけました。会社から許可を得て行きましたが、部署が違うというので、私は有休消 化、もう一人は勤務という形で処理されました。法律的にみて、このような扱いはどうなのでしょうか。

A: 裁判判例や労基法では、「研修」が使用者の支配拘束下にあって指揮命令に服しての参加である場合は、労働時間となります。

  1.業務命令で「研修」を命ぜられた場合。

  2.「研修」が職務内容に関するもの。

  3.「研修」が職場環境や規律の維持向上に関するもの。

  4.「研修」が安全衛生や労基法等職場環境の保持に関するもの。

  5.「研修」に参加しないことによって本人の業務に支障がでるなど、不利益になるもの。

 このような「研修」の場合は労働時間ですので、有給休暇で処理することは違法となります。また時間外で行われた場合は、当然残業代が支払われなければなりません。土日の「研修」にも当然賃金は支払わねばなりませんし、法定休日出勤の場合は 3 割 5 分増です 

   上記要件に当てはまらない研修は、業務と関係のない私的な研修となります。






0614
<強制される週1回の勉強会>

Q: デイサービスに勤めています。

毎週水曜日、介護保険の勉強会があり「強制ではないけどできるとき参加してください」と始めに言われました。

ところが昨日「参加しない人は分かっている」と、今度テストすると言われました。

今、利用者のための秋祭りの準備などで毎日帰りが遅く、家庭の用事ができません。

毎週あることや、強制じゃないと言いつつも強制になっていることが負担になっています。

それを言うと、あなたたちのためを考えてと返されます。

利用者も多く、人員が少ない時はバタバタで皆つかれがでてきてます。

どうしたらよいでしょうか?

A: 通常の勤務時間が終了した後に、会議や研修会に参加することが、 契約時に約束した仕事の範囲であるかどうか判断する必要があります。

仕事の範囲であれば、参加の義務があることになります。

仕事ではなくあくまでも任意の勉強会であれば、参加の義務はありません。

仕事の範囲に該当するのかどうかは、雇われた時の契約の内容や、 実際に行っている仕事の状況、勉強会の内容や参加の仕方等により、 それぞれ個別に判断することになります。

参加が強制ではない、と言われていますが、テストすると言われており、 仕事に直接関係があり、実質的に強制となっているので、 業務性が高く、仕事の範囲である可能性が高いと考えられます。

仕事の範囲であれば、勉強会の時間は、当然、労働時間に該当し、参加の義務があります。

労働時間に当するのであれば、賃金、労働時間(時間外労働)の問題が発生します。

会社と話し合いが必要になった場合、 労働者一人から加入できる労働組合(ユニオン)に支援を仰ぐことも可能です。

あなたのお話に真剣に耳を傾け適切なアドバイスをしてくれるはずです。

近くのユニオンをご紹介しますので必要であればお問い合わせください。



0615
<出張での移動は労働時間か?>

Q: 出張での移動時間は労働時間になるのかどうか質問させてください。

日曜日の朝からお客様先で作業があるため、土曜日の晩に自宅からお客様先近くのホテルまで移動しました。

そのままホテルに泊まり、日曜日の作業を行ったのですが、土曜日の移動時間は労働時間になり、会社に申請しても問題ないのか教えてください。

私なりに色々調べた結果、
「出張中の移動時間は、日常出勤に費やす時間と性質的に同じか、類似したものと考えられ、労働時間に算入されず、時間外手当の対象とはならないとするのが相当です。」
という記事が多く見られました。

お客様の情報や、作業で必要な機材・工具等を持って移動している場合も、日常出勤と同じと言えるのでしょうか?


A: 出張先への移動時間については、現行制度では通常の通勤時間と同様に扱われ、残念ながら労働時間とみなされず、従って時間外手当の対象としなくてもよいとされています。

これは移動時間の長短に関係なく適用されているため、あなたの事例のように出張先での業務を遂行するために前日から移動しなければならないといった場合でも労働時間とみなされないのが通例です。

ただし、移動時間であっても労働時間としてカウントされ、時間外手当の対象とされる場合があります。

それは、出張先での業務に必要な書類や商品・機材等の運搬・監視や、出張先での業務遂行に必要な諸準備などを移動中に行うことを会社から特段に指示されている場合です。

あなたはお客様の情報や、作業で必要な機材・工具等を持って移動してたとのことですが、これが時間外手当の対象となるかどうかは、会社からの指示の内容、携行した情報の重要度、機材や工具のサイズや重量などを個別具体的に検討して判断されることになります。

以上の点を参考にされ、一度会社と話し合ってみてはどうでしょうか。

一人で会社と交渉するのが難しければ、どこの地域にも一人から入れる労働組合(ユニオン)がありますから、まずはそちらに相談を持ちかけ組合員となり団体交渉等の支援を仰いでみてもよいと思います。きっと、あなたのお話に真剣に耳を傾け適切なアドバイスをしてくれるはずです。


0616
<本当に変形労働時間制?>

Q:私は歯科医院に勤めていて、そこでは1ヶ月単位の変形労働時間制での勤務をしています。

始業時間は決まっているものの患者の状態によって休憩時間、終業時間はその日によってまちまちな状態です。

にも関わらず、昼休みを削って仕事しろ!とか土曜日は午前のみの仕事なのでそのあと残って仕事をしろ!とか言われています。

いろいろ調べると労働時間をしっかり定める必要があるとのことですが、シフトもありません。

また、0歳の子供を育てていますが、帰り時間が安定しないうえに、帰りが遅く困っています。

この場合、変形労働時間制を使うのは違法ではないのかと思い相談させていただきます。

A:おっしゃる通り、そのような状態だと、変形労働時間制とは名ばかりで、実際は都合よく働かせているだけだと思います。

まず、1ヶ月単位の変形労働時間制を導入するには、労使協定か就業規則に定めが必要であり、1ヶ月の枠内で各日、各週の労働時間の特定が必要になります。

枠内では、例えば一週目で40時間を超えても、何処かの週で超えた分を減らし調整し、1ヶ月を週平均したら、40時間になるということです。

当然、それを超えた労働に対しては割り増し賃金も発生します。

各日、各週の労働時間が決まっていない、守られていないのであれば、労働基準法違反ですので一度、就業規則、労使協定を確認されてみてもよいと思います。

相談・申告する行政機関としては、会社所在地を管轄する労働基準監督署になります。


0617
<妻の長時間労働を何とかしたい>

Q:私の妻ですが働き始めて1年経ちましたが、毎月のように80時間以上の残業があります。

体がついていかないようでとても心配です。

法律違反ではないのでしょうか?

何かとれる手立てを教えてください。

A:大原則から伝えさせていただきます。

労働基準法では、1日8時間超、1週40時間超の労働を禁止しています。

本来残業自体が禁止されているわけです。

では、なぜ残業をしている人がこんなにいるかというと、使用者と職場の労働組合か労働者の過半数代表が、「時間外および休日労働に関する労使協定」を締結すれば、その締結した時間までは残業が認められることになります。

まずはご本人がこの協定を締結したうえで、労働基準監督署に提出しているかの確認をしてください。

使用者には就業規則と労使協定の周知義務が労働基準法で定められています。

誰でもいつでも確認出来る状況にしておかなければならない、ということです。

ここからは、労使協定の内容についてです。

協定において、残業できる時間を無制限に定められるわけではありません。

厚生労働省は、「時間外労働に関する限度基準」という告示を出しています。

その中での限度時間として1ヶ月45時間、1年で360時間と定めています。

これを超えた時間の協定については、労働基準監督署から健康ガイドラインの提出を求められたり、指導が入る可能性が高まるため、基準以内での提出がほとんどです。

ただし、特別条項といって、特別に忙しい月は1ヶ月の基準を超えることを定めることも可能だし、最大6か月まで特別条項を適用することができます。

そのような協定を実際定めている会社もあります。

その場合には、残念ですが、長時間労働だけでは法律違反にはなりません。

他に注意すべきポイントとしては、残業が1ヶ月に80時間、100時間以上の場合、労働者から申し出た際の医師の面接指導を実施させる義務があります。

申し出をすることも一つの手だと思います。

また、使用者には労働者の安全に配慮する義務があります。

長時間の残業が健康に害を及ぼすことは明らかなあるため、長期間続いていて何の対応もとらない場合安全配慮義務を定めた労働契約法に違反することになります。

結果として、1年を通して毎月80時間を超える残業がある場合には、労働基準法第32条違反になる可能性があり、労働安全衛生法違反、労働契約法違反になる可能性もあります。

長時間労働には、残業代の未払いが同時に起こっていることが非常に多いです。

残業代は支払われているか、支払われていても正当な金額であるのか、などを給料明細から把握することも重要になります。

是正のためには、労働時間の証拠を確保して労働基準監督署に動いてもらうことです。

情報提供は家族でも可能なので、ご本人は仕事が忙しくて平日に労働基準監督署にいけないという場合でも、家族が事業所のある労働基準監督署へ情報提供をすることが出来ます。

月80時間を超える残業は、厚生労働省が定めているいわゆる「過労死ライン」を超えているため、長時間労働により脳・心臓疾患になる可能性が高いです。

また、精神疾患も月に45時間以上から徐々に危険が高まり、100時間を超えると労働災害の基準に達してきます。

一刻も早い対処が必要です。

ご家族への説得、労働時間の証拠集めを始めてください。


0618
<「パートだから」と休憩を取りあげられ食事がとれない>

Q:現在パートでスーパーマーケットの中でカート整理をしています。

スーパーは年中無休で6:00〜23:00まで開店しています。約12日/月、出勤時間はシフト制です。

勤務時間は6時間。

休憩時間は30分で勤務時間にプラスされます。

昼をまたぐ場合(10:00〜16:00)、夜の場合(16:00〜22:00)は弁当を持っていき休憩時間中に取っています。

ところが、このたび法令順守とのことで、休憩時間は、労働時間が6時間を超える場合のみ与えるということになりました。

よくよく聞いてみると、現在の休憩時間は労基法上では与えなくてもよいので休憩時間は不要とのことです。

変動はありますが月7〜8日程度昼食、夜食をとることができなくなります。

約2万歩(10km)/日、早足で長い連結カートを押すので、力がいる仕事で早く空腹になります。

何か対抗手段はないのかお教えください。

A:なるほど会社側が主張する通り、労働基準法第34条第1項では、6時間を「超える」労働時間ならば休憩時間を少なくとも45分、8時間を超える場合であれば少なくとも1時間、労働時間の途中に与えなければならないと定めています。

従って現在の6時間の労働時間であれば休憩時間を設定する必要はありません。

原則、労働の種類による区別はありません。

但し、労働条件の変更には以下の法令があります。

(労働契約法第9条)
使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。

現在の就労状況と賃金の支払状況を文章から読み取ると、休憩時間も含めて労働時間と設定されて賃金も支払われているようです。

故に、休憩時間を取らせないという変更は単に賃金のカットを意味するものであり、労働者にとっては労働条件の不利益変更と考えられます。

このような重要な労働条件の変更は合理的な理由が必要であり、労働者の同意が必要と考えられます。

いずれにしろ使用者との交渉は不可避と思われますので、会社やお住まいの近隣に労働者一人から加入できる労働組合(ユニオン)があれば、まずはそちらに相談を持ちかけ組合員となり団体交渉等の支援を仰いでみてはいかがでしょうか。

きっと、あなたのお話に真剣に耳を傾け適切なアドバイスをしてくれるはずです。

ご自身の健康のためにも、改めてのご相談をお勧め致します。

 


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