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労働組合結成マニュアル




 

  以下の論文は、石川源嗣『ひとのために生きよう!団結への道-労働相談と組合づくりマニュアル』(同時代社2006年刊)のうち、「第2部 労働組合結成マニュアル」を全文掲載したものです。
  労働組合作りの参考にしていただければ、幸甚です。




目 次

第2部 労働組合結成マニュアル
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・129
はじめに

第1章 組合結成の進め方 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・134
1.組合説明会
2.支部結成大会
3.組合結成申し入れ行動
第2章 組合説明会での説明内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・144
1.組合のない労働者の境遇と労働組合
2.労働組合とはなにか
3.労働者、労働組合を守る法律
4.労働組合の結成は簡単だが、大事なことは労働組合を強くすること
5.なぜ東部労組(地域合同労組)の支部になることを勧めるか
6.会社の組合つぶし
第3章 組合結成後の諸問題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・158
1.組合活動、組合運営
2.組合のモラル
3.企業内と企業外(社会的)労使関係の違い-社会的労働運動

.
第二部 労働組合結成マニュアル

 

..はじめに

 未組織労働者の組織化、労働組合づくりは合同労組の主要な活動である。しかし、労働組合づくりは自然にできるものでもなく、組織の受け皿があればできるものでもない。

  労働組合づくりのためには、未組織職場に組合を作ることを決意した労働者を助け、組合づくりを成功に導き、その後強い労働組合を職場に根づかせることを援助できる本部活動家・オルグが必要である。それも大量の活動家、組織化オルグがいなければ、強大な労働組合を建設するといっても夢物語にすぎない。経験を積んだ大量の活動家、組織化オルグを作り上げることが当面する組織化の実践課題であろう。それなしには「未組織労働者の組織化」は空念仏に終わる。

  ジャパンユニオン、東京東部労働組合の運営する労働相談センターに寄せられた今年前半の労働相談は昨年の月平均270件を遙かに凌駕して、毎月430件を超えている。それは労使の矛盾が深刻さを増し、広がりを強めていることの反映にほかならない。小泉内閣の「痛みを伴う構造改革路線」が失業率の上昇、中小零細企業の倒産などによってますます労働者に犠牲を押しつけることは間違いなく、労働相談はさらに増加するであろう。

  しかし労働債権型相談に対して責任ある対応を従来通り行いつつも、重点をしっかり恒常的組合づくりに設定し、それに対応できる活動家、組織化オルグの育成に主要な力を注がなければならない。
  そのための一助として、1999年に書いた2編の文章を改訂し、本パンフレットとして編集した。

 会社・職場でトラブルに見まわれ、何とかしたいと考えた労働者がインターネットの労働相談センターやジャパンユニオン、東京東部労組のホームページ、または電話帳のタウンページをみて、あるいは何年か前のビラを持って、組合にやってくる。

  相談者は怒りいっぱい、だが同時に不安いっぱいである。
  相談を受けてくれる組合のスタッフは自分の怒りを理解してくれるのか。きちんと対応してもらえるか。つっけんどんに、けんもほろろに扱われるのでないか。相談に乗ってくれる人は信用・信頼できるのか。不安は雲のようにわいたまま事務所の扉をたたくのである。

  したがって当方の対応は、①当事者の怒りと要求と闘いの正当性をきちんと理解し、はっきり評価・支持・激励を相手に伝えること。②組合結成は相談した通りやれば必ず成功すること、の2点について相談者が確信を持つようにしなければならない。

  面接の第1回目が勝負の分かれ目である。最初の面会で相手の信頼をかちとらないといけない。2回目でちゃんと説明しようと思っても、そういう場合は2回目のチャンスはない。

..第1章 組合結成の進め方
...1.組合説明会
  多くの相談の中で組合結成につながりそうなケースについては東部労組事務所に来て面談するよう促す。遠方の場合はこちらから出向くこともある。相談者との面談が実現した場合は、相談者のかかえる問題と要求をよく聞き理解した上で、その問題の分析と要求の実現可能性について、大衆闘争の面と法的な面の双方から話す。そしてその問題を解決するためには労働組合(東部労組の支部)を結成する必要があることを提案する。その時点での相談者は個人であることが多いので、その場合は、組合づくりの効力、方法など後述の「第2部 組合説明会での説明内容」の概略だけを話し、近日中に会社のその他のひとを集めての組合説明会の開催を提案する。集められるできるだけ多くの仲間を集めてもらう。組合加入を決めている人だけでなく、説明を聞いてから決めてよいことを伝えておく。

  その後、日時を改めて組合説明会を行い詳しく説明する。その場合の説明と協議の重点は「要求」の確認と実現への段取りである。要求の正当性と実現性の保証として、労基法、労組法を結びつけることは説得力がある。

  この組合説明会をできるだけ、しかし無理をせず支部結成大会ないしは支部結成準備会に誘導すべきである。少なくとも支部結成準備会を組織するようにすれば、参加者のやる気を継続させ、方向性を示すのに有利である。支部結成準備会を作る理由としては、今後支部結成までの間に会社に組合結成の動きがばれた場合でも準備会を作っておけば、会社の不当労働行為などに対して通常の労働組合と同じく権利主張ができることを説明するようにする。その場で組合加入申込書に各人に記入してもらい、それをもって準備会の結成とする。
  つまり組合説明会での獲得目標は、当人たちが組合結成の必要性と実現性に確信を持てるようにすることである。

...2.支部結成大会
  支部結成大会への本部と他支部からの出席人数は考慮して決めた方がよい。多ければ励ましになると思うのは本部側の考え方であって、新支部を結成する当事者たちにとっては無言の圧力、恐怖の対象と受けとめられるケースが多い。そのため自由に意見が言いづらくなり、組合を無理矢理結成させられた気分になる。過去にそれで失敗した苦い経験がある。したがって本部側出席者は新支部組合員より多くしない方がよい、というよりできるだけ少なくするようにした方がよい。そして新支部組合員が不安も含めて自由に発言し、すべてを自分たちで決める雰囲気を作ることが肝心である。
  最初に東部労組の組合案内パンフレット「東部労組に入って生活と権利を守ろう!」を参照しながら、説明会の必要事項のおさらいをする。

  支部結成に必要なことの第一は、支部規約の決定である。パンフ記載のモデル支部規約に当該支部の支部名称、住所、会社名、規約決定期日を記入すればできあがりである。支部の住所は特別の事情がない限り、会社の所在地にしてかまわない。それらを出席組合員の拍手で決定する。

  第二は、支部役員の選出である。委員長、書記長以外は支部構成人数によって柔軟に改変してよい。ただできるだけ多くの組合員を役職者にした方が以後の組合運営は比較的うまくいくようだ。

  第三に、要求の決定である。これは時間をかけてみんなでよく協議して決めるようにする。労基法違反があれば改正要求として必ず入れる。これは申し入れ行動で必ずとれるので、組合結成の意義を強め、組合員を元気づけるので重視する。各支部共通の事項である協議約款(「今後、労働条件の変更については労使協議して決定する」など)、憲法など法の順守、組合事務所・掲示板など権利関係の要求は必ず入れるようにする。今までの不満が多いからといって要求を何十項目とだらだら列挙しないようにする。たくさんでた場合は第1次要求ということにして10項目前後にまとめる。その他は第2次以降の要求として取っておく。

  第四に、組合結成通知の確認を行う。パンフ記載のモデル文書に当該支部3役氏名を入れたものを委員長が読み上げて確認する。

  第五に、組合結成申し入れ行動の日程(社長が在社の時)と進行・段取り、任務分担を決定する。その他注意事項の必要な再確認を行う。

  最後に、「団結がんばろう」の唱和でしめる。「団結がんばろう」については、支部組合員は見たこともなければやったこともないことなので、まず本部側で見本を示して説明し、支部委員長の音頭で行う。今後支部の集まりの度に人を変えて行い、気合いを入れることを習慣化する。

...3.組合結成申し入れ行動
  申し入れ行動の日程は事前に社長またはその他の決定権を持つ会社代表者が比較的在社している時間帯を組合内で決定するが、通常の場合は会社側には通告もしないし、アポイントも取らない。突然押し掛けるようにする。それは会社側にできるだけよけいな準備させないようにするためである。

  予定時刻に支部の全組合員および東部労組本部責任者(正、副責任者2人くらいがよいが、最終決定権は1人にすること)とその他で会社に行き、社長と面談する。組合員が社長を取り囲む形にして本部責任者と社長が向かうようにするのがよい。これ以降本部がこの申し入れ行動を主宰し、すべてを仕切ることが必要である。いつはじめ、いつ終わるのか、途中どういう風に進めるのか、の申し入れ行動全般にわたって指導するとともに、責任を持つ。本部責任者は、当事者である労使双方に対して、主導権を取るようにしなければならない。

  まず本部責任者が社長に名刺を出して自己紹介するとともに、東部労組についての東京都地方労働委員会発行の「組合資格証明書」を見せる。これは東京都が認めた労働組合だということで私たちが思う以上の効果と安心感を社長に与えるので必ず入れた方がよい。

  そのあと、本部責任者が当会社で東部労組の支部として労働組合を結成したことを社長に告げ、これから支部委員長が結成通知を読み上げるのでよく聞いてもらいたいと発言し、委員長が結成通知を元気よく、大きな声で読み上げる。終わったら全員で強く拍手する。ついで書記長が要求書を読み上げるが、これは1項目ごとに拍手して確認する。支部組合員は「そうだ」とかヤジ非難の声を積極的に出すようにする。

  ついでいよいよ要求書の1項目ごとの協議にはいる。
  最初に本部責任者は社長に対し、合意できた事項については文書確認すること、もしこの場で合意できずに検討したいと社長が判断する事項があればそのように扱うこと、決して無理矢理合意を強要しないことを通告しておく。
  要求書の1項目ずつを本部責任者が取り上げ、それについて支部役員が説明し、社長が答える。支部組合員にとっては長年我慢してきたことである上に、社長が何とかごまかそうとするので、どうしても怒鳴りあう傾向が強くなる。それはそれでかまわない。というより本部責任者がいなくなった後の労使関係を考慮して、また会社と支部の対決を本部が調整する形にするためにも、さらには社長の支部懐柔策を阻止するためにも一定程度の怒鳴り合いはむしろ必要なことである。気合いを入れてヤジ非難の声を出し、今までやったことのない怒鳴り合いをすることで、新しい労使の力関係を築くことができるのである。要求書の協議で留意すべきことは、「今後労働条件の変更については労使双方で協議して決定する」とのいわゆる協議約款と組合事務所・掲示板など権利問題についてはこの申し入れ団体交渉で獲得するようにする。その後に取ろうとしても労使関係がいったん固定してしまうとなかなか難しい。

  協定書締結にあたっては社長は当然サインを躊躇する。その時にはすかさず本部責任者は社長に対し「組合結成時にはしばしば無用のトラブルが発生しやすい。些細なことで激突する。これは組合結成という労使関係の一時的不安定によるものである。しかし組合としても無用なトラブルは極力さけたい。トラブルを回避する有力な手段は目に見える文書による協定書である。今日の時点ではこれらの項目については労使合意ができたというものがあれば、十分でなくとも組合員は安心して今後一歩一歩交渉でやっていこうとなる」と説得する。

  このようにしてすべての項目について合意のとれたことはその場で本部責任者が手書きで労使協定書を作成し、労使双方代表者の署名捺印をとる。作成年月日は必ず記入する。印鑑がないとかの問題が出たら、会社が持ち帰って後で判子をついて渡すなどということには絶対にせず、その場で印なしでかまわないから協定書の締結を優先させる。後で判を押して持参するとなって、会社が持ってくることは滅多にないことを肝に銘じておこう。印鑑がなくても、労働協約の役割は十全とはいえなくても十分果たすことができる。そしてこの労働協約がその後の労使関係の基本的枠組みを作る上で持つ力は大きいものがある。

  かつて東部労組で組合結成申し入れを行う場合、本部と支部の数人で会社に出向き、会社側と面談し、組合結成を通知したあと、1週間ほど後の団交を約束させるくらいで帰っていたが、今は上記のようにその場で要求の基本問題の解決をはかるようにしている。そうしないで1週間ほど後の団体交渉で話をつけようとしても、その時は会社はすでに労務や弁護士と相談して準備を整え、すべての要求事項について引き延ばしをはかり、その間に会社が組合つぶしに専念するという事態を招いてしまうことになる。私たちは何度か苦い経験をしている。

  また本部責任者は、組合というのは労働条件の向上を目的とするもので、会社をつぶすことが目的でないこと、会社が組合に対して誠実に対応すれば組合も誠実に対応すること、組合は労使関係の安定を望んでおり労使関係の混乱、労働争議は望んでいないことを社長に対して何度も繰り返し強調する。このことは会社と社長に対して牽制になると同時に、東部労組についての会社のデマ宣伝をはねかえすだけでなく、組合員教育にとっても強力な意味を持つ。

  申し入れ団体交渉が紛糾した場合、社長にこの修羅場を納められるのは本部責任者以外ありえないことを理解させ、頼らせるようにする。また社長が途中で逃げようとしたら(思うほどにはあまり例はない)、今より以上の混乱を呼ぶことを通告し、押しとどめる。社長も今後の諸事情を考えればなかなか無条件に逃亡できないものである。

  社長は「組合ができたら会社はつぶれる」、または「組合ができたから会社をつぶす」と言って、組合員に揺さぶりと脅しをかけ、様子を見る。そこで組合員が動揺し、効果があると見たら、さらに追い打ちをかけ、組合を弱体化ないしつぶすことに全力を挙げる。だから逆にそのような社長の発言があったら、すかさず「待ってました」で、「会社は社長だけのものでない。労働者はここで働いてここの給料で家族を含め生活している。社長の会社私物化を許さない。脅しによる組合つぶしを許さない」と反撃の契機にして粉砕する。

  社長が「警察を呼ぶ」と言ったときは、「どうぞ呼んでくれ」と対応する。決して「警察を呼ぶのをやめてくれ」などとは言わない。「警察にどちらが正しいか聞いてもらう」との積極的な態度を社長に示す。実際に警察が来た場合は不当な民事介入は許さない。警察が「労使でよく話し合ってくれ」との姿勢を示すようにする。

  これらのことを事前に、支部結成大会またはその他の会議で十分意思統一しておくことが必要である。

  組合結成申し入れ行動の実際のやりとりは1999年2月の弥生運送支部の実例がドキュメント・ビデオ「組合づくり-リストラへの回答」になっているので、ぜひ参考に見ていただきたい。

..第2章 組合説明会での説明内容
  東部労組本部の組織化オルグ(支部担当者)は組合説明会において、おおよそ次の内容を自分の言葉で、出席者に話す。熱意を持って話すことは必要だが、自分だけ熱くなって空回りしないよう気をつける。アジテーション的でなく、静かに説得調の方が効果があるようだ。話は冗漫にならないようにして、長くても1時間以内に切り上げる。話の終わった後の質疑応答が大事なので、なんでも話せる雰囲気づくりに心がける。後で聞くと本部側が思ってもみない問題で悩んでいる場合が往々にして見受けられるので、そこに十分時間をとることは非常に大事である。

...1.組合のない労働者の境遇と労働組合
  労働組合のない労働者(つまり、あなた方)が職場で不満を持ったとき選択できる道は、①社長と喧嘩して辞める(または黙ったまま辞める)、②我慢して泣き寝入りで働き続ける、の2つしかない。

  当事者も漠然とは感じているそのような無権利状態をはっきり示す必要がある。問題が顕在化していない普段の会社生活では、自らの無権利を自覚するよりも、それなりに会社での地位と権限があたかもあるかのように、多くの労働者は錯覚しているものである。

  しかしいったん問題が発生した場合、労働組合のない労働者の企業内での境遇がいかに不安定で、無権利で、みじめであるか、本当に、辞めるか、泣き寝入りしか選択肢がないことを自覚させる必要がある。そのことによって、相談者が強いカルチャーショックを受けることが望ましい。

  そこでその無権利状態を変える唯一の有力な武器が労働組合であることを提示する。労働組合を結成することによってはじめて、会社も辞めないし、また泣き寝入りもしないで、要求をかちとり、無権利状態を克服し、労働条件の向上・安定した労働生活を獲得し、労働者としての尊厳を確立できることを力強く示す。

  私たちは、勇気を持って労働組合結成の道を歩むよう立ち上がれ!と相談者に呼びかける必要がある。
 
...2.労働組合とはなにか
(1)要求(労働条件の向上、組合権利の獲得)を労働者の団結でかちとることが労働組合の目的である。東部労組規約では、第3条(目的)で「この労働組合は組合員の団結により、労働者の生活と権利を守ること及びその社会的地位の向上を期す」となっている。零細企業ではとくに残業代未払、有給休暇不支給などが必ずと言っていいほどあるので、実状をよく聞き、必ず要求に入れて是正させるようにする。

(2)個人や親睦会と違い、労働組合は法律で保護されている。日本国憲法(第28条「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」)や労働組合法である。たとえば労働組合が会社に話し合い(団体交渉)を申し込んだら会社は正当な理由なく拒否できない。会社が拒否したら労働組合法で不当労働行為として罰せられる。

(3)労働組合には思想、信条の自由がある。労働組合は要求で団結する。組合員の宗教・政党を問わない。

(4)組合結成は会社をつぶすことや労使紛争が目的でない。正常な労使関係の確立で労働条件の向上をはかることが目的である。むしろ会社の方が組合をつぶすために労使紛争を起こし、その結果経営を危なくする危険がある。会社が経営危機を招く策動を行う場合は組合がそれを阻止する。

(5)つまり会社の組合つぶしをはねかえし、労働組合の結成、維持、強化をかちとることが要求貫徹と労働者の職場での地位を確立するための保障である。したがって、いったん労働組合を結成したあとは労働組合としての組合員の団結権の強化、職場拠点の確保に全精力を傾けなければならない。

...3.労働者、労働組合を守る法律
  日本国憲法では第28条において、団結権(労働組合を結成運営する権利)、団体交渉権(会社と交渉を行う権利)、団体行動権(ストライキなどを行う権利)をいわゆる労働3権として明記している。これは単に労働3権を労働者の必要に応じて行使してもよいものとして認めているだけではなく、もっと積極的に「労使対等」(労働組合法第1条<目的>、労働基準法第2条<労働条件の決定>)をかちとるうえで不可欠のものとして、つまり労働3権がなければ労使対等はありえないものとして提起していると理解されなければならない。労働組合を作り、団体交渉を行い、ストライキを構え実行することが唯一労働者が会社経営者と対等に渡りあえる方法であり、条件である。憲法と労働組合法は「労働組合を作りなさい、団体交渉をやりなさい、また必要に応じてストライキをやりなさい」と奨励していると理解するのが正解である。

  日本国憲法第28条の具体化である労働組合法の中では、第7条(不当労働行為)が大事である。使用者(会社経営者から経営者の指示を受けた一般従業員もふくむ)が労働者、労働組合に対して法律違反になるのでやってはならない不当労働行為とは、主に①組合員であることを理由に、解雇、減給、賃金その他組合差別、会社解散など組合員に対して「不利益な取り扱い」をすること、②団体交渉を拒否すること、③組合結成の妨害の言動、脱退の勧奨、組合調査、報復、威嚇、強制、利益誘導の言論など労働組合に対する「支配介入」することである。

  組合結成、申し入れ行動の後、会社側は必ずといっていいほど組合つぶし攻撃をかけてくる。それに対抗する組合側の法律上の武器が労働組合法第7条(不当労働行為)であり、十分活用すべきである(使い方については後述)。

  また労働組合法では、団体交渉やストライキなどの活動に対して刑法第35条の「正当な業務によってなしたる行為はこれを罰せず」を適用し、組合活動に警察権力が介入できないようにしている(労働組合法第1条刑事免責)。そのため団体交渉での激しい口調やストライキで会社に損害を与えても、脅迫罪や威力業務妨害で警察は介入できない(ただし暴力は許されない)。さらにストライキで会社に莫大な損害が出ても、会社は組合や組合員に損害賠償を請求できない(同第8条民事免責)。

  日本国憲法第27条(勤労の権利義務、勤労条件の基準)に基づいて作られたのが労働基準法である。労働基準法は、「労働条件は労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきもの」、「この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、この基準を理由にして労働条件を低下させてはならないだけでなく、向上を図らなければならない」(第1条)を労働条件の原則としている。労基法の基準は当事者の意思にかかわらない強行法規であり、すべての事業所に適用される。経営者や従業員が自分の会社は違うといっても通用しないものである。中小零細企業で頻発するのは、労働条件明示義務、週40時間、残業割増、年次有給休暇などの問題である。これら労基法違反の是正問題は必ずかちとれるので、組合結成申し入れ行動時の要求の中に入れて、行動を有利に展開するようにする。

...4.労働組合の結成は簡単だが、大事なことは労働組合を強くすること
  組合規約と役員を決めれば組合結成はできる。あと要求があればよい。どこかに届ける必要はない。

  しかし言うまでもなく労働組合は作ることだけが目的ではなくて、いかに組合を持続させて労働条件を向上させるのが目的である。労働組合はいったん結成したからといって、もうそれで完成とはならない。作ってもすぐつぶれたのでは意味がない。労働組合は生きた労働者で構成されているので、結成後強くなるか、弱くなるかのどちらかである。それは主に支部の組合員の努力にかかっている。組合結成がうまくいったからといって油断して放っておくと、組合は必ず弱体化しつぶれる。組合を強くするためには執行部を先頭に組合員全体の意識的な努力が絶対に必要である。

  組合を強くするためには、次のことに留意しなければならない。
(1)常に団結に努力すること。
  そのためには要求とその獲得方法を、みんなで討議・みんなで決定・みんなで行動という組合民主主義の徹底で実行することが大事である。また仲間を裏切らないことをみんなの合い言葉にしよう。

(2)闘争すること。
  「闘って要求をかちとる」を繰り返すことが大事である。自力自闘を基本に自分たちの問題はまず自分たち支部でたたかう。そして東部労組各支部の援助と地域の支援を受ける。同時に、「受けた支援は運動で返す」をスローガンに他支部と地域の争議支援を行う。労働者は兄弟姉妹であり、常に仲間のことを思い、お互い助け合わないといけない。

(3)学習すること。
  なぜ勝てたか、なぜ負けたかの総括を闘争の節目ごとに行い、点検すると同時に、理論学習も行う。

...5.なぜ東部労組(地域合同労組)の支部になることを勧めるか
  労働組合の結成の仕方には大きく分けて2つある。一つは会社内だけで組合を結成するやり方(企業内組合)である。もう一つは東部労組の支部として労働組合を結成するやり方(地域合同労組)である。

  東部労組は地域合同労組としての経験を30年以上積んできた。組合結成や労働争議で勝ったこともあれば負けたこともある。その蓄積してきた膨大な経験すべてを現在の新支部の闘いに集中して活用できる。倒産闘争を経験したことのある企業内組合はまれで、ほとんどないといってよいほどである。合同労組は倒産争議を無数に経験せずにはおれない。それが企業内組合に比べた場合の地域合同労組の第1の優位点である。企業内組合は無経験のまますべてゼロから始めなければならず、失敗する可能性は強い。

  地域合同労組としての東部労組の第2の優位点は、企業内組合が主に企業内労使の力関係(会社側は警察や日経連の加勢がある)だけで決着をつけなければならないのに対して、地域合同労組は本部と全支部つまり東部労組総体をあげて該当する個別企業と対峙するだけでなく、場合によっては地域共闘、全国団結(全労協など)で包囲することができる。通常企業内でみるかぎり力関係は会社側が組合を圧倒している。その闘いの土俵を地域合同労組全体対会社、地域共闘対会社、全国団結対会社に広げることで、力関係を変えるのである。たとえば会社はどんなにがんばっても東部労組本部や他支部の人間を解雇することはできない。

  第3の優位点は、新生支部が一本立ちするまで、東部労組本部と支部担当者が責任を持って指導および援助を行うことである。支部担当者とは、新支部が結成されるとともにその支部の指導と世話役をまかされる本部執行委員かそれに準ずる経験のある組合員のことで、本部執行委員会で選出される。結成直後の新支部は会社側の組合つぶし攻撃が予想され、支部と支部担当者の迅速な対応が勝敗を決するケースが多い。外部からの何の援助もなく未経験の企業内組合だけで会社の組合つぶし攻撃を粉砕することはきわめて困難と言わなければならない。

  東部労組と支部の関係について、支部の結成時に本部は支部組合員と二つのことを約束する。第一は、労働組合の将来は労使の力関係ですべてが決定される以上、誰も予測することはできない。しかし支部がどういう事態になっても東部労組本部は最後まで責任を持って対処することを約束する。そして第二には、支部の方針をめぐって、本部は支部に対して指導・助言・説得を行う。それでも支部が本部の方針に納得できない場合がある。その時は本部は支部に方針を無理矢理押しつけない。最後は支部が自分で決めることを約束する。

...6.会社の組合つぶし
  組合結成を歓迎する会社経営者は少ない。口で大歓迎を表明する経営者は時々いるが、くれぐれもそのまま信用してはいけない。それは組合をつぶす目的で組合を油断させるためにいっていることを自覚すべきである。ワンマン社長(中小零細企業はほぼそうである)にとって、組合ができる以前の、つまり労働者が無権利の状態で、社長が言いたいことをいい、やりたいことをやれた時の方がよかったのは当たり前である。だから社長は必死でその状態に戻そうとの努力を怠らない。チャンスを見つけ、組合の隙をついて、会社はかならず労働組合をつぶそうとする方が普通なのである。したがって、組合側は常に油断を戒め、会社側の組合つぶし攻撃にいつでも対抗できる精神的、物質的準備を怠らず、実際組合つぶしがきたら即座に粉砕しなければならない。

  会社の組合つぶしは、労働組合が結成直後の段階か、またはある程度の経験を積み力を持った段階かで違う手法を使う。

  結成直後の組合に対しては、支部組合員に対する直接の脅迫と懐柔(アメとムチ)による不当労働行為の連発と東部労組本部への根拠のないデマを流すことで本部に対する支部の不信感を醸成し、両者の分断を図ることが主な手法となるケースが多い。そして会社はその後の推移を見ながら効果をあげるところを攻めてくる。

  どちらにしても、会社の攻撃に対しては「水際でたたく」ことが何よりも必要である。攻撃は小さなものから始まることが多いので、些細なことだと放置せず、必ず攻撃を受けた組合員がその場で反撃するか、ないしは執行部に報告してみんなで反撃するようにする。よく個人的なことだからと自分だけで判断して、反撃も報告もせず放置するケースがあるが、これが一番よくない。会社は反撃のないところにはどんどん攻め込んでくる。組合員が会社経営者(または経営者の指示を受けた一般従業員)から、どんな些細なことでも、気にくわないことを言われたりやられたりしたら、会社側に「不当労働行為だ(この言葉を思い出さなければ「法律違反だ」でよい)」と抗議する。不当労働行為に該当しずらいこともあるが
、それほど気にしなくてよい。必要であれば後で訂正すればよい(必要なら事後処理の責任は本部でもつ)。肝心なことは小さなことでも大騒ぎをして、水際で会社の攻撃を粉砕することである。不当労働行為の実行当事者は社長、取締役、管理職に限らない。一般社員でも会社の意を受けたと判断できることであれば、不当労働行為の実行当事者であり、糾弾の対象になる。遠慮することはないが、みんなでよく相談して職場状況の総合的判断によって決めることが大事だ。

  もう一つの東部労組へのデマによる不信感で分断を図るやり方に対しては、事実を示しデマを暴露することによって不信感を除去する。しかし結局一番大事なことは支部組合員自身が何のために組合を作ったのかを考えてもらうことだ。当たり前のことだが、東部労組のために組合結成を決意したのではない。または東部労組が命令して組合結成したのでもない。あくまで自分たちの権利と生活を守るため組合結成を決意したのである。
そういう自分たちの組合結成を東部労組が援助してくれるなら、東部労組は自分たちの味方である。デマに対しては過剰に神経質にならず、おおむねそういう認識でよい。

..第3章 組合結成後の諸問題
...1.組合活動、組合運営
  組合(支部)を結成すると、組合員とくに執行部を構成する人たちの日常生活は変わる。組合活動、組合運営という今までになかったことが加わった新しい生活が始まる。執行部同士、また組合員同士で協力しあって組合活動を無理なく遂行できるようそれぞれ新しい生活を築いていこう。

  組合活動とは日常的には「会議」を意味する。すべてのことは支部全体会議(多くの支部で月1回開催)、執行委員会(多くの支部で週1回開催)など「会議」を通して、組合員の協議と合意を形成することができ組合員全体の実行に移される。「会議」がなければ組合の意思統一も民主主義も行動も組合のすべてがない。だから「会議は労働組合の命である」というのである。「会議ばかりやっていても行動がなければ意味がない」という非難が生きるのは、会議で十分意見を闘わせて結論が出たにもかかわらず行動に移らない場合であって、会議もやらず意思統一もせず行動だけを強調することではない。

  東部労組は合同労組なので、自分の支部だけうまくいっていればよいとはならない。 各支部の闘いの勝利は東部労組総力の闘いによってかちとられるものである。

  各支部は支部代表者会議、ブロック会議、その他東部労組本部企画の諸行動に積極的に参加し、企業の壁を越え、東部労組総体の行動力を鍛えて強化しよう。

  また組合費については、本部納入額である総収入の1.5%のほかに、毎月定額で500円か1000円を支部専用組合費として徴収する支部が多い。

...2.組合のモラル
  職場での信頼はその人の仕事に対する姿勢で決められる面が強い。口でいいことを言っても、というより言えば言うほど、仕事に対する姿勢でその人は判断される。理由のない遅刻、欠勤、早退は不信感を生む。仕事は陰ひなたなく、しっかりすることが信頼関係の基礎である。

  とくに組合結成後、組合の力が強くなった場合、仕事上のモラルのゆるみにならないよう気をつける必要がある。労働組合があれば怠けてもよいという誤った思想は早期に払拭しなければならない。労働組合の組合員は権利を主張するだけでなく、仕事もきちんとやることを示さなければならない。

...3.企業内と企業外(社会的)労使関係の違い-社会的労働運動
  労使関係を企業内だけにとどめないで、広く社会的労使関係にするよう追求する必要がある。社会的労使関係といった場合二つのことが含まれる。

  第一は、闘争主体つまり私たちの側の問題である。
  企業内だけの労使関係では社長の独断が通用する。一歩工場の中に入ったらすべて社長の判断が基準で、社長が法律である。会社の中では「(社長の)無理が通れば(従業員の、世間の)道理が引っ込む」社会が構成されている。組合結成後も組合が企業内従業員対社長の関係だけで解決をはかろうとしても、会社側ないし社長の経済力、組織力の方が組合に比べて圧倒的に強いから、組合が社長を圧倒して屈服させることは難しい。

  一方、労使関係を個別企業内にとどめず社会的労使関係とした場合、社会常識、社会正義、法律が判断基準となることによって、社長の独断が通用しづらくなる。会社の反社会的行為を全面的に暴露して社会に訴えることが力になる。労働基準監督署、労働委員会、労政事務所その他行政機関に会社の不当性、不法性を訴え、味方につける。また支部、東部労組、地域共闘など対社長との関係を作り出し、会社なり社長に対する強力な社会的包囲網を形成する。

  つまり労使関係を企業内にとどめず、意識的に社会的労使関係に広げ、社会を味方にして、労使の力関係を変え、会社を孤立させるのである。

  第二は、企業自体を社会的な関係性の中でとらえ直し、該当企業の包囲網を敵の側から形成することである。特定の一企業が社会的に単独で成立することはありえない。資本主義の経済的関係性という無数の網の目の中に存在する。いわば縦軸、横軸の関係性を利用して特定の企業を包囲するのである。戦後労働運動が創出した争議の武器である「法人格否認の法理」(別法人であっても実質的に支配関係が立証できるなら、該当する子会社の法人格は否認され、親会社の責任追及ができるという法理)、また「使用者概念の拡大」(特定企業だけでなく親会社、背景資本としての責任追及ができる)を特定企業の問題によく適用する事が必要である。私たちの事例で言うと、たとえば大久保製壜闘争における大正製薬であり、エープライ闘争における道路公団である。したがって普段から個別企業をとりまく事業、業界、関係企業の調査研究は不可欠である。

  ちなみに、中小零細企業のワンマン社長はその社長の個人的性格などで生み出されているものでなく、本質は日本の企業体質(資本主義)が生み出すシステムとして把握すべきである。だからどこの中小零細企業でもワンマン社長が多いのは偶然でない。ワンマン社長体制を社長個人の問題でなく社会システムととらえた場合、社会的労使関係の中に企業を位置づけ直す意義が改めていっそう出てくる。

  つまり結論としては、支部と会社の関係を個別企業内の労使関係の中だけにとどめないで、一面では東部労組全体、地域、全国の労働組合・労働者と個別企業の関係、他面では親会社、背景資本、取引先企業と個別企業の関係の中に位置づけなおし、該当個別企業に対する社会的包囲網を形成することを通じて、力関係を組合側に有利にすることが必要である。
                                                                    以上

労働相談センター 全国一般東部労組 ジャパンユニオン